抱き合いっこ

宮崎県の山間部の小さな小学校が
毎年取り組んでいる行事をNHKが取り上げていた。


「スキスキバレンタイン」というテーマでバレンタインまでの
1週間ほどを家族や父母と抱き合うことを宿題にしているという。


乳児から幼児になり児童へと少しずつおとなへ成長していく過程で父、
母にしっかり抱っこしてもらう機会が減っていることへの策なのだろうか。


抱き合うことができた日は丸印をつけ最後の日が終わると
父や母に感想をかいてもらい、学校に提出する。
適度な緊張感があり、学校中での取り組みなので
知らん振りするわけにはいかず、児童たちはまじめに?
家族とふれあい、その楽しみや喜びをクラスのなかで語り合っている。
その表情がいかにもしあわせそうである。


毎日、お父さん、お母さんと抱き合うことができ花丸印が
並んでいる子どもの多い中で、一度もできない児童もいて
番組はその子にスポットを当てていた。


もちろん強制でもないから学校はあたたかく見守っている。


「抱き合う」この何気ない行動が自然にできない背景には
本人の照れもあるだろうが、親子のあいだで少しの距離が
あることも見逃せない。


この児童が生まれたとき、父親は仕事で3ヶ月間ほどを
留守にしていた。
その子を抱いている写真が1枚もないとわかった時点で
父親は遅まきながら、息子とのふれあいを重視し、
きちんと夜には帰宅できる仕事に転職している。


毎日少しずつ会話をし、キャッチボールをし、
親子の情を育てていく。子どもは、
はにかみながらも父親からのスキンシップを
受け入れるようになる。


毎年「スキスキバレンタイン」の宿題は
親にも見せず学校にも出さなかった。
今年の宿題提出のときがやってきて、
相変わらずバツ印が並んでいる表の
一番最後の日にやっと丸印ができた!


うれしそうに頬を染めている表情がなんとも言えず
見ているわたしでさえ、胸に迫ってくるものを感じた。


「抱き合う」ことのふれあいを通して、
父も母も子どもの成長をじかに知るという。


ニコニコとその宿題に取り組む姿にほほえましさを感じる。


成人した子どもであっても、夫婦間のそれでも自然に抱き合うことが
できると相手への情が増すような気もする。


児童虐待など目を覆いたくなるニュースの多い中で
子どもを大切にし、愛情を受けていることの確認のような
ほほえましい学校の取り組みに胸を打たれた。


小さな小さな親と子のふれあいが大きな人間形成に
関わることを思うと拍手を送りたい気持ちになる。
f:id:mursakisikibu:20131225153902j:plain]