4月の風に誘われて

生温かい風が吹いている。

日差しがきつく初夏を思わせる気温である。
室内の温度計は21度をさしている。


いつもの散歩コースをゆっくり歩いてみたくなった。
しばらく遠ざかっていた川べりを歩く。
春休みを惜しむかのように子どもたちが川岸で釣り糸を垂れていたり
キャッチボールに興じたりしてにぎやかな歓声をあげている。


まったく、こちらに越してくるときには気づかなかった「川」の
有り難さである。
駅からそう離れていないのに空気が澄んでいる。
夏には涼風を運んでくれ、季節を問わず人に情緒を傾けてくれる。


帽子を深めにかぶり、サングラスをかけ薄手のコートで出かけたが
数分も歩かないうちに、コートを脱ぎ、
手袋をはずし、セーターさえ脱ぎたくなる暑さである。


しかし4月の風は心地よい。


いつも思う。
平日にゆったりと散歩できるしあわせを・・


家々の玄関先や庭に植えてある草花を見て歩くのも楽しい。


秋から冬へまた春までじっと出番を待っていた草花が
いっせいに芽吹き、緑豊かな色彩で庭を彩っている。
他人の庭であっても愛着を感じてしまう。


川べりも、若草いろや黄色や白のコントラストが見事である。
たんぽぽや菜の花や、花にらやなどと一緒に、
薄紫の山藤がひっそりと木に絡んで存在を示している。
何と愛らしい花だろう。


デジカメを持ってこなかったのを悔いた。


名も知らない雑草が勢い良く頭をあげ、草いきれのような匂いを醸している。


石ころが見えるほど澄んだ水が流れている川面は
小さな小波を打っている。


深く息を吸ってみる・・・
ほのかに初夏の香りがする。

菜の花の匂いに、小学校時代のこの季節を思い出す。
自分の背丈ほどもある菜の花畑で上級生とオニごっこをしたこと、
ヤブツバキに顔を寄せると、甘い匂いに「ツバキの花飾」りが目に浮かぶ。


4月の生温かい風は郷愁を誘う。
花や木々の香りに幼いころをだぶらせる。
なんとも言えない心地よさ・・・・


さくら吹雪をあびながら遅い昼食を摂っている花見客がいる。


さくら色の淡いじゅうたんを歩きながら、春をしっかり満喫した。


「風が気持ちいい〜♪」
「花がきれい〜♪」
時々3歳児の孫、潤平が大人びた詩人のような言葉を伝えてくれる。


今日はそのことばを借りよう。
「風が心地いい〜♪」


万博公園の水芭蕉

万博公園の花梨