ぜったい死んだらあかん!

先日の裁判員制度の中での判決の報道を目にした。
「職場で自殺未遂をした息子を母親が殺した」という事件に
ついての裁判員の酌量が施された判決である。


植物状態になったことを悲観するその息子の妻を慮り
また医療保険がきかないために莫大な医療費がかかることなどが
息子を手にかけた要因であるらしい。


遺された家族の苦しみ、哀しみ、息子に手をかけた母親の気持ち・・
他人であってもあまりにも重たく、やりきれなさが募る。


自ら死を選ぶということ・・・
いかなる理由があったのか。


生きていると予期しないことに遭遇する。
思い通りにはいかないことのほうが多い。
さまざまな、壁にぶつかる。


わが愚息はある企業の営業職につき、それなりの
成績を収めているようである。


負けず嫌いなところのある彼は、それが振るわないとき
思いつめるタイプで「ある。
暗い顔で「仕事を辞めたい」と、ときどき弱音を吐く。
上司に叱責されることに耐えられないと思うとき
「死にたいわ・・・」などとポツリと漏らすこともある。


冗談ででも、そんなことは口に出したらあかん!
ぜったい死んだらあかん!と愚かな母は、強く叱咤する。


漂母は思う。
仕事のなかで早く、出世しなくていい。
一番に、ならなくていい。
下積みを長く重ねるほど、力がつく。
たくさんその経験をしたらいい。


他の目を気にせず、叱責は右から左に聞き流せよ。
バカ正直に、とことんやり抜こうとする気概は母親似か。
そのうち燃え尽きはしないかと本気で心配する。


幸いにも愚息は、分不相応なほど趣味をたくさん持ち
休みのときは、妻を伴い遊ぶ知恵を持っている。


少し風穴を開けると違った世界が見える。
壁や挫折はあって当たり前、思うようにいかないことが
人生と諦観して欲しい。


石楠花