母は強し。


孫の潤平がママと妹のかえでと3週間ぶりぐらいにやってきた。
この4月から彼が3年保育の幼稚園に行きだし、
以前ほど会えなくなっている。


3歳児の潤平がわが家の玄関に入りなり発した言葉は
「あのオレなぁ・・・」である。


つい最近まで「あのね、じゅんくんね・・・」と可愛らしい
ハスキーな声で言っていたのに。
まるで声変わりをした中学生のようなことを言う。
「ひやぁ、幼稚園に行くともうこんな言葉を仕入れてくるの〜?」
この変わりように、ばぁばは心底驚いた。



その3歳はからだも幾分か、平均より大きいらしい。
おとな顔負けの達者な言葉を使い、まわりを笑いの渦に巻き込んだり
やんちゃもどんどんエスカレートしている。



でも1歳を過ぎたばかりの妹かえでには、けっこうお兄ちゃんらしさを
振る舞っている。


一緒にピアノのおもちゃで歌ったり、好きなトミカの自動車を
貸してやったり、かえでのおむつを変えるときも、おむつを持ってきたり
こまごまと面倒をみて、楽しそうだ。


ところが、まだ3歳児である。
危ないことの限度がわかっているようで、わかっていない。
かえでと遊んでやっているつもりが、妹が嫌がっているにも
関わらず、ちょっかいを出す。
1歳は、そのはずみでこけて頭を角でぶっつけ大泣きする。


こういうことが日常頻繁に繰りかえされ、片ときもママは目が離せない。
ハラハラのし通しである。
半日ほど彼らと一緒にいると、ばぁばもグタッと気疲れする。
怪我をしないとも限らない。
日々子どもはあちこちにコブを作り、大きくなっていくのだろう。


「してはいけないこと、危ないこと」をわからせるため
ママはそのつどいい含め、時に心をオニにする。


お尻タタキは3歳との約束ごとなのだろう。
潤平:「大きいほう?小さいほう?」
ママ:「大きい方!」
泣きながら、ごめんなさいを言っている。


それでもお尻の刑は、1回だけバチッ!とされる。
「いやぁ!!〜〜ごめんなさーい」
近所中響き渡るような大きな声で泣く。
虐待と疑われかねない泣き声である。


ばぁばも自分がされているようで痛く、見ているのが辛い。
けれどここで口を挟んではいけない。
ひとつ一つのことを根気よくママは教えないといけない。
かつて、ばぁばがママであった時代と同じように。


お仕置きのあとは、ママは泣いている潤平をしっかり
抱きしめ、ことの善悪を教えている。
どこまで理解できるのかわからないが
とにかく毎日毎日子どもと真剣に向き合う。


マンションの中庭に二人を連れて行き、遊ばせる。
午後になると学校から帰ってきた小学生たちも混じり
鉄棒や、ブランコや滑り台のまわりはにぎやかである。


芝生の上でボール投げをしている子どもたちもいる。
その大きいお兄ちゃんたちの中にひょいと潤平が加わる。
どういうわけか、自分より大きい子どもの中に入るのが好きなようだ。
キャッチボールを一緒にしてもらっている。
まったく知らないお兄ちゃんとしばらく遊んでもらっていたのが
気がつくと5,6人の子たちに囲まれている。


最初は何か冗談をいいながらふざけているのかと様子を見ていると
潤平のママがと突然「やめなさーい!!」彼らに大きな声で叫ぶ。
「じゅんも早くこっちおいで〜〜」呼んでいる。


何が起きたのかよくわからないけれど
どうも周りの大きい子達は小さい新参者の潤平に
悪態をついているらしかった。


さすがにママの見立ては当たっていたらしく
バツの悪そうな顔で子どもたちは散っていく。


子育てを卒業したばぁばは、「性善説」的なモノの見方をしてしまい
それらを見抜くことができなかった。



子どもを育てることは一筋縄ではいかない。
親は信念を持って子育てをしないといけない。
親は子どもを守らないといけない。



やっぱりママは、強い。
母は強しだ。