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男とおんな

知(痴)人の愛


娘夫婦から贈られた母の日のプレゼントは、大好きなアジサイである。



K子の婚活③


K子とS氏の付き合いが始まった。
彼はいま小さな会社の会長職を勤める傍ら、海外貿易にも携わるなどしている。
大阪在住ではあるが週の大半を東京で過ごし、行き来をしているという。
彼女たちが会うのは彼が帰阪したおり、都心のホテルで食事をするというパターンが
繰り返されていた。


S氏は彼女の離婚の原因を深く知りたがる。
もちろん、まだ籍が抜けていないこと以外はきちんと話をした。
彼の離婚の原因も知った。


子どもの教育にお金がかかり過ぎ、それを補うために彼の妻が
夫の駐在地で事業をし、多額の借財を負ったことや、
家庭を顧みなくなったことなど、紹介者から訊いていたが少し、
それとは違っていた。
本当は彼の浮気が原因だった、と告白してくれたことは
好ましく感じられ、彼への高感度が増す。


けれどやはりそれと関連する事柄に遭遇することになり
だんだん、S氏への関心が不審へと変わっていった。
どこか違う・・
なじめないものを感じるようになった。


まずは女性に対する扱いや、他に対しての横柄な態度など不快なことがある。
ささいなことだけれど、例えばタクシーの運転手さんへの
相手を見下したモノ言い、またカラオケが好きな彼と食事の後、
スナックなどへ連れ立っていくことがあり
ひとりでマイクを独占し、他人のことを考えることができない。
このようなことが気に障るようになった。
長いあいだに培われた海外でのエリート生活に起因しているともいえる。


少しずつ会話を重ねお互いを知るようになっても、二人の間は一向に進展しない。
熱い思いが沸いてくるのでもない。
胸もさほど、ときめかない。
一緒にいても少しも楽しくない。
将来のビジョンを描くことができない。


「こんなに真剣に女性と付き合ったのは初めてだ」
彼は言ってくれるが、K子には響かない。


結局、深いところでの生き方に関する共感がなかったと言えるのか。
彼女はつきあって半年ほどでS氏と別れた。


当人ではないから二人の懊悩は、こちらにはわからない。
彼女が求めることと相手が求めることの温度差があるように
わたしには、思える。
お茶のみ友達を欲しているのではなく結婚というのは、重たいのかもしれない。


今さらでもないが、長年別の環境で生きてきた男と女が出会い、
お互いを理解していく課程は、ほんとうに一筋縄ではいかないものがある。


当たり前のことだが、真正面からぶつかってゆく「真剣勝負でなければ進展しない」。
どちらでもいいか、という思いがあるとこの事は成就しない。

生きてきた分だけ、良くも悪くもそれぞれが垢を背負い込んでいる。
お互いのそれをどう受け止め、受け入れるのか、という命題に突き当たる。


感性が合う、合わない、価値観が合う・・・とはどのようなことなのか。
ましてや異性の、それも人生の終盤に近づいた人とのそれは誠に難しいと感じる。


一方でK子の場合、長年彼女と関わってきたわたしから見ると
彼女の夫との確執、自分の母親との関わりなどが、ないまぜになり、
意識化に微妙に影を落としていることがわかる。


自分の生き方探しに人生の伴侶を見つけるということは
理に叶っていないかもしれない。
K子の男と女の出会いを見ながら、わたしも学ぶことが多い。
人間の感情は、なかなかやっかいである。