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メタボ男出現!

知(痴)人の愛


藪うつぎ




K子の婚活⑥

ネットでのやり取りに疲れたK子は一旦、その会をやめた。
なかなか理想の男に出会えない。


しばらくして彼女から
「また登録しようかなぁと思うのよ」
電話がかかってきた。
今度は、わたしにプロフィールを書いてくれないかと言う。
え〜?少し抵抗があったものの、わたしはK子の特徴を知っている。
彼女の、清楚にみえる外見を膨らまし、
少し色香漂う「自己紹介」文を書き与えた。


果たしてまた前回のようにメールが入って来た。
50代後半でも、年齢関係なしに申し込むひとがいるのだなと
半ば感心しながら経過を見守っていると
「今度は少し人間的に深みのある男性が多いような気がするわぁ」
K子は喜んでいる。


そして現れたのが土建屋メタボ男!
70歳にならんとしている。
世の男性は自分よりひと世代若い女性を選ぶ傾向にある。
いまや、自分の娘と似たような年齢のカップルも珍しくない。
実際に壮年になると同じ年齢でもかなりの個人差がある。
それは女性とて同じこと。
実年齢より若くみえたり、老いて見えたり。


建設会社の子(孫?)会社で現役の社長らしい彼は歳相応の恰幅さがある。
偶然、部下にそのサイトを紹介され面白半分に
部下に登録をしてもらったのだという、不遜な輩。
K子のプロフィールを目に留めたのも部下である。
そうであれば、彼は部下に感謝しなければならない。
幸運の女神に出会ったのだから!


土建屋社長は、経歴も悪くはない。
(土建屋という言葉は差別用語に解釈されるがわたしは
”土木建築”の略語として使っている)


仕事の中では、やり手で通っているらしい。
その手で積極的に迫ってくる。
何より今まで出会った男性にはない、強引さを持っている。
グイグイ引っ張ってくれるその彼に頼もしさを感じて
何回目かのやり取りの後、会うことにした。


プロフにあったようにベンツに乗り、グルメ三昧である。
毎回レストランへとエスコートしてくれる。
二人の息子は、一人がイタリアンレストランを、
もうひとりが和食の店をやっているというということで
彼には自慢の息子であるらしい。


ゴルフのハンディがシングルであるというのもK子は気に入った。
男でゴルフが下手なのは、好きではない。
二人でコースを回るのもそう遠くはないか、久しぶりにわくわくする。


しかしこの土建屋社長、身長のわりによく肥えて
完璧なメタボ体型なのである。
顔にギラギラと脂をにじませ「濃い」顔立ちでもある。
う〜ん、少しK子の好みと違う。
彼女は細めのシャイなタイプが好き。


土建屋メタボ男は妻に先立たれて10年以上が経っており、
長男夫婦と同居しているがうまくいかず、
食事もほとんど外食だ、と身の上話をする。


大きな声で話し、行動が大ざっぱなところが気にかかる。
何となく感性が合わないなぁ、とK子は思うが
テキパキと行動的なところが、彼女の気持ちを捉えた。


つきあってみると、彼の交友関係の広さに驚く。
おまけにグルメが趣味ときていて、あちこちの店に彼女を引っ張りまわす。
取引先や行きつけのレストラン、なじみ飲み屋さんのママにまで
連れて歩き、紹介する。


K子は、彼の目から見ても40代後半ぐらいにしか見えないらしく
そして知性的な顔立ちがいっそう雰囲気美人にみえて
彼女との交際がたいそう自慢であるらしい。


元妻の親戚、自分の老いた兄弟縁戚関係にまで紹介する始末である。
紹介したあと相手からの彼女をほめる言葉を、待つ。
ほめ言葉が彼の自尊心をくすぐるのか、帰宅後に確認の電話までしてK子の
更なる歓心を得んとする。
そのことがK子には浅薄にみえて、好きではない。


慎重に考えることにし、彼との今後を占い師にみてもらった。
彼女の感触とおり「まったく感性が合わないよ、でも人情に篤い男だねぇ」
この言葉に勇気を得てつきあうことを決めたのだそうである。


そのメタボ男と半同棲して1年以上が経つ。
K子の夫が定年を迎える来年あたり、晴れて籍が抜ける。
そのときに結婚しようと二人は決めている。


男はK子のメタボ対策のおかげで、既往歴にある糖尿病などの数値が下がり
「K子のおかげだ!」とたいそう喜んでいるそうな。
一緒に暮らし始めてみて、またぞろお互いのアラが目に付き
K子は悩むところだが、いまは平穏に治まっているようだ。


まったく男とおんなの結びつきというのは、どこに転がっているかわからない。


しかし掌中に収めようとすれば、それなりの努力と忍耐が必要である。
そして大事なことは男をみる見識眼と、ひいては人間を見る目が必要になってくる。


有名レストランや料理店、はたまた接待ゴルフや接待の札幌雪祭りまで
連れだされるK子を、なかばヤッカミ半分な気分で、
これみな接待交際費で落としてるいるのかなと、わたしは勘ぐる始末である。


かくしてK子の婚活はこのようにして締めくくられた。
でも危うい感じも否めない。
いつか破局が訪れるかも、と思うのはわたしだけか・・・。



谷うつぎ