『女は男の指を見る』 竹内久美子著


江戸系・八ヶ岳



新聞の広告の見出しを見て、驚いた。
著者は動物行動学が専門であるらしい。
ネットで少し調べただけで読んでいないから、内容はよくわからないが
タイトルだけ見ると、なんと世の中には自分と似たような
捉え方をするひとがいるものだなぁとびっくりした。


わたしの好きだった作家の森瑶子はエッセイのなかで
自身が男を見るときに一番に目がいくのは
「男のうなじである」と言っていた。
髪を剃りあげた青白い後ろの首筋に男の色香を感じるのだそうだ。
そして男の食べ方、飲みっぷりにも男の知性や生き方を感じ
重要視するとも書いていた。


たいていの女性は、男のファッションにまず目がいく。
男の身に着けているスーツがネクタイの色と合っているか。
結び目であるシャツのVゾーンときちっと合っているか、
首周りより大きいシャツを選ぶとVゾーンが開き
だらしなく見え、おしゃれとは言いがたいなど
女の視線はけっこう厳しい。


わたしは一番にどこをみるだろうか、と考えると、
「男の手」を意識していたように思う。


ゴツゴツとした、たくましい手、
ふんわり白い餅のような手、
そしてそれらの先にある「指」をみてしまう。
芋虫のようなもっこりとした指は好きではない。
指先に黒い垢などあると幻滅である。
やはり、すらりと伸びた指先でペンを走らせる手や
ページをめくるときの指の動作に思わず目がいく。


男の手や指先には、ある種のエロティシズムがあるように感じられると
思っていると、前述の学者はみごとにそのようなことを書いている。


人差し指と薬指の長さを比べた場合、薬指の長い男は出世すると説き
加えてセクシーさも持ち合わせ、そのことに強い・・・と。
自分の恋人や伴侶探しの目安とするとき、男の指は
それらのモノサシになるらしい。


いまや、男の手や指をしみじみと眺めることも
少なくなったわたしであるが
「女が男の指を見る」行動にそのような意味が
込められていることを学術的に考察しているのが面白い。
さっそく書店で、表題の本を覗いてみよう。



江戸系・霧が峰