下駄の思い出

先日、久しぶりに下駄を出してみた。


今週末、わがマンションで行われる夏祭りに
浴衣をきてみようか、と思い立ったからである。
潤平たちにも同じように浴衣を着せ、夜のまつりを
楽しもうと思っている。


浴衣には下駄・・・
マシなのがあったかなぁと下駄箱の中を捜し回る。
あった!流行遅れのひなびた下駄が・・・。
試しにちょっと履いてみると、軽くて涼しい。
何より素足でおれるのがいい。


下駄なんてよほどのことがない限り履くことがない。
夕方この軽い下駄を履き、買い物に行ってみた。
カランコロンと、心地よい響きである。
けれどわずか1時間足らずの歩行なのに、
もう鼻緒で擦ったのか親指との境に小さな「水ぶくれ」が出来ている。
痛いなぁ・・・。


今の季節サンダルなどよりよっぽど下駄は、涼しげだ。
しかし着る物とのバランスが必要になる。
思えばこの下駄、買ってからきちんとした出番なしに
わがやの玄関の奥深く眠ったままなのである。


何年か前に、ある仕事のセミナーに一泊で参加したときのことである。
ちょうど7月の暑い時期で、2日目の研修はお昼に終了した。
夕方の便で帰阪することになっており
大阪から参加した他のメンバーと博多で遊びながら
時間待ちをすることにした。


電車に乗り界隈を散歩したりウインドーショッピングなどして歩き回る。
皆、ドレスアップして高めのパンプスを履いている。
案の定というか、足が痛くなりギブアップ。
慌てて空港の喫茶店に入り足を休め
往来の人を眺めたり、テナントのショップをみていると
ちょうど目の前に粋な下駄の専門店があり
桐の素敵な下駄が並んでいるのが目に留まった。


わたしたちは、その下駄に見入られ、
それぞれのお気に入りをみつけると
さっそく履いてみた。


何しろみな、かかとに豆ができて痛いので、靴を履きたくない。
「このままこれを履いて帰ろう!」意見が一致し何とそのまま
下駄履きで空港のショッピングを楽しみ
飛行機に乗り我が家に帰ってきた。


中年を越すとこのような大胆なことができるのである。
ワンピースや、スーツやジャケットに身を包んだ女性たちが
「みんなで渡れば怖くない」式で堂々と下駄の音を響かした。
あのときの下駄を今年は、きちんと履いてやろう、と思っている。