「医者が診つめた源氏物語」

医学的見地から登場人物の「病気」に焦点を絞って考察をした、という
鹿島友義氏のコラムがおもしろい。
抜粋してみよう。


『先に注目したのは、光源氏の母、桐壺の更衣
帝のあまりの寵愛ゆえに周囲からねたまれ、
「はかなき心地にわずらひて」という具合に追い込まれてゆく。
現代であればストレスゆえの心身症といったところだろうか。


源氏の正妻、葵の上の出産も興味を引いた。
物語上はもののけのせいで難産になったとされ、
祈祷も持ち込まれているが、これを「紫式部日記」にある
一条天皇の中宮彰子の出産場面と読み比べると
別の解釈が可能になるらしい。


彰子も難産だったが、それは糖尿病前の状態で胎児が
通常より大きく育っているためではないか。
彰子は糖尿病とその合併症のような症状を呈して亡くなった藤原道長の娘。
体質的に糖尿病の気があったはずだ。
彼女がモデルであろう、葵の上も糖尿病の素地があると考えられる、と
いっている。


「まことに心地もいちなやまし」などとされ
うつ病が疑われるのは源氏の親友の長男、柏木。
自己卑下や自責、死の願望などうつ病の兆候も多く描かれている。


柏木はきちょうめんでまじめな人物でもある。
そうした性格の持ち主がうつ病になりやすいことは
現代ではよく知られているが、式部はそのことを頭で理解していた
わけではないと思われる。


的確な観察力が図らずも、医学的な常識を合致した人物造形を
可能にしたのだろう。
彼女には人間というものがしっかり見えていたのだ。』



ということで、源氏物語を現代医学で診断している
鹿島氏の表題の著書に関心を持っている。
ちょっと手に取ってみたい気もしている。



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