しあわせな時間

退職して一年半が経ち
ようやく生活のパターンが定着してきた感がある。
遅い・・・・。


昨年は、朝から晩まで小説を読みまくっていた。
貪欲に・・まさに貪るように本漬けの毎日だった。
活字のなかに埋もれて、精神の飢餓を満たしていた。
もちろん、仕事をしているときも電車のなかでの
読書や休憩時間でのその、愉しみは忘れていない。


気がつくと,本を読むことが少なくなっている。
他に関心事が増えたためであるが、それも、良しとしていた。
しかし、じっくりモノを読まないと語彙が貧困になって、いけない。
それでなくとも、言葉につまるようになっていて
衰えた脳みそを実感している。


ささやかな日々のなかで、クリスマスローズの新芽の膨らみに
喜びを感じ、ペチュニアのあざやかな花びらに
こころ癒されるのもしあわせだ。



昨年、仕事を辞したあと、とにかく人と会いたくない自分がいて
スケジュールを入れるのが、しんどいわたしが、いた。
電車に乗って出かけるのさえ、億劫に感じていた。
心身の極度の緊張と疲れから出たものと思う。
若いころは、ストレスに関しても跳ね返す力があり
ヤワな自分ではなかったはずだが、いつのまにか
少女の?ような繊細な心をもつ自分になっており我ながら驚いたりする。
生きるというのは、様々な自分との闘いであるともいえる。


パール・バックの「大地」4巻、引っ張り出した。
山崎豊子の「沈まぬ太陽」4巻これも読み返そうと、出してみた。
でも、読みかけてはみたが、先へ進まない。
少し関心が薄れてきたのか。


懐かしい、モーパッサンの「女の一生」を一気に読んだ。
初めて目にしたのは、いつごろだったか。
ストーリーだけは、はっきりしているが
どのような思いで、これを読んだのかは覚えていない。


広大な領地のなかで夫をめとり、両親と暮らす主人公
ジャンヌの結婚生活からの一生を描いている。
妻になるというのは、どんなことか・・・
現代では考えられない潔癖さと純真さが、夫の背信行為と
性格のゆがみによって、ジャンヌの生活はどんどん浸食されていく。
息子を溺愛するがゆえに起こる、不幸・・・


情景描写が素晴らしい。
ひとつひとつが、まるで映像のように浮かび上がる。
こんなに丁寧に、じっくり描く背景に、
目を閉じうっとり味わう自分がいる。


せっかくできた自由な時間。
わが身に課したことを学ぶ喜びと
ささやかなしあわせに浸っているわたしである。