感動と感謝を

父と子の会話である。

高一の男子が、郊外活動の一環で、ある講演会に行ってきた。
講演会での物語りに登場するのは、神様と虎、馬、鳥、ねずみ。
元気のない動物たちに神様が理由を尋ねる。


虎は馬より早く走れず「自分は劣っている」と悩んでいる。
馬は鳥のように飛べないと嘆き、鳥は虎のように強くないと卑下する。
そこに元気なねずみがやってきて、この世の中に誕生したのは
自分にしかない役割があるから、と言って励ます。
勇気づけられた2頭と1羽は、それぞれ役割を全うし、商売繁盛を呼ぶ
ホワイトタイガー、しあわせを運ぶ青い鳥やペガサスになった。
それでねずみは何になったのか。
「ねずみの名前がなんとミッキーなんだ」と男子。


講演会は、人と比べて不平不満を抱くのではなく、
今できることに感謝して一所懸命に取り組もう、という趣旨だったようだ。


ポツリと話す口調に感動がにじんだ。
聞いている側にも伝わってきた。
同時に、息子が人の生き方を求め、人生訓に感動する年頃だったことに
改めて気づく。


ミッキーという名の代わりに君の名前が
当てはまることを願う、と父は結んでいる。


小さなひとつの感動が情操をはぐくむ。
父親が男子に対して「いい縁を結べる人間に育って欲しい」と
願う親の気持ちに、心がほっこりしてくる。


今年も、もうすぐ終わろうとしている。
胸の痛む事件や事故が多く、乳幼児虐待では憤りと哀しみが
増幅された一年だった。
その犯罪要因のひとつに「孤独化」があると言われ、
うまく他とのコミュニティを築けない人が多くなっているという。
人が孤立しているとき、ミッキーのようにさり気なく、勇気を与えらえる
人がいるとずいぶん救われるのではないだろうか。


年の瀬には、この一年の来し方を思う。
わたし自身のことで言えば健康に留意し、医者いらずで、
薬やサプリとも縁のない生活を送られたことをありがたく思う。


他との出会いもまた己を成長させるよすがとなり、
良き出会いに感謝している。
中高年世代になってからの友達作りというのは、なかなか難しい。
「シニア・ナビ」のなかでブログやギャラリーを通じて
親しくなった方とのご縁が増えた。
実際会って話をし、友情が深まっている関係もある。
嬉しい限りであり、このような良心的なサイト作りに
腐心されている事務局にも感謝したい。
そしてご縁をいただいた皆さまに、「ありがとう」を伝えたい。


来たる年もまた、感動や感謝するこころを
大切につないでいきたいと願っている。


ありがとうございました。
どうぞ皆さま良いお年をお迎えください。