日本経済は中国に依存してない。

少し堅くて長い文章になるけれど気になることが
あるので、記してみたいと思う。


日本のGDPは中国に抜かれて世界三位に陥落」の記事が
昨秋から新聞に掲載され始め、以来マスコミは自虐的報道を繰り返している

去る14日、内閣府は2010年GDP統計値を発表し、
世界第三位を確認していた。
中国には人口が日本の約10倍の13億人がいて、
経済が成長するならばGDPの増大は当然のことではないだろうか。


しかし「どうしてマスコミはそのことを嘆き悲しみ、中国を羨むような発言や記事を朝から晩まで垂れ流す節操のないことをするのか」と、気分が悪い。
そのうえ先日、中国の旧正月(春節)に際して押し寄せた観光客の買物が、
低迷する消費拡大に寄与しているかの報道である。
どう考えても納得がいかない。

そうした折に、経済評論家、三橋貴明氏の
『中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!』という本が
売れているという記事を目にした。


今日のマスコミは「日本経済は中国の成長に依存している」と
いう先入観を日本中に浸透させているが、三橋貴明氏は
その偏向報道・自虐的報道を定量的データで喝破する
優れた経済評論家であるようだ。


この本では「中国は世界一の金持ち国」「中国はアメリカを
抜いて世界一の経済大国になる」など、一部マスコミが
垂れ流しているプロパガンダを喝破しているとのこと。


「成長する中国と衰退する日本」という虚像に洗脳されて、
いたずらに中国に平身低頭したり、我が国の未来を悲観することは、
国家の前途を誤らせるのではないか。
これらのプロパガンダの嘘をデータを通じて明らかにしている。

その要旨は大変説得力に富んでいる。
マスコミはなぜこうした事実を伝えないのか。


伊勢雅臣氏がこのことに触れており、わかりやすいので
孫引きとなるが、割愛しながらここに紹介したい。

               


1.対中輸出はGDPの2.79% に過ぎない.
さきに「日本経済は中国に依存している」という事が
事実かどうか見てみよう。
依存」の定義として、以下の3つが考えられる。
1) 中国への輸出がなくなったら、日本経済は大変なことになる。
2) 中国からの輸入がなくなったら、日本経済は大きな打撃を受ける。
3) 中国への膨大な投資がパーになると、大損害だ。


まず中国への輸出だが、平成21(2009)年度における
中国・香港向けの輸出額は約1415億ドル。
これだけみるとずいぶん大きいようだが、同年の日本の
GDP(国内総生産)は約5兆ドルなので、そのわずか2.79%でしかない。


例えれば、年に500万円の利益を上げている「日本株式会社」があるとする。
その顧客の一つが倒産して、14万円の売上がなくなったのと同じである。
多少の痛手ではあるにしても、致命傷というほどのことはない。



2.中国からの輸入は2.44%、しかも代替が効く品が多い
輸入はどうか。中国・香港からの輸入は、同じく平成21(2009)年度で
約1236億ドル、GDPの比率にして2.44%である。


しかも中国からの輸入は、農産物や安価な工業製品が多い。
農産物なら多少値段が高くとも、高品質で安心できる国内産で代替できる。
その分、国内農家が潤う。


尖閣諸島での中国漁船衝突事件で、レア・アースの輸出制限が
大きな問題となったが、三橋氏によれば、そもそも90年代に
レア・アースはアメリカや南米、オーストラリアなどで
普通に産出されていた。
その後、中国がダンピング攻勢をしかけたので、これらの国の
鉱山が閉鎖に追い込まれたという。
中国がレア・アースを売らないというなら、
再びこれらの国から買えばよいだけだ。


ということで、中国が無くなっても、GDPへの影響は
2.44%の数分の一という規模であろう。
「日本株式会社」の例で言えば、これは年12万円
ほどの仕入れ先が一つなくなったが、その相当部分は他の仕入れ先に
振り替えればよい、という話である。



3.対中投資はGDPの1%強
もう一つは対中投資である。
「日本から中国への膨大な投資がパーとなっ
たら大損害だ」と言われるが、本当にそうか。


平成21(2009)年度末での対外直接投資残高で見ると、中国向けは550億
ドル。GDPに対しては1%強。日本の対外投資残高は7404億ドルで、
そのうちの7.4%に過ぎない。これは対米の4分の1、
対西欧の3分の1の規模である。


「日本株式会社」で例えれば、町内のあちこちに74万円ほど貸し付
けているが、そのうち隣の「チャイナ株式会社」に貸していた5万円が
焦げついた、という事である。経営が傾くほどのことではない。


中国政府がもし日本の資産を接収するような暴挙をしたら、日本はGD
Pの1%強を失うだけだが、その瞬間にすべての外国からの対中投資
ストップするだろう。


中国が海外から受け入れている直接投資残高は、平成20(2008)年度末で
3781億ドル。日本の対中投資の6.8倍もの規模である。海外からの投資
がストップしたら困るのは「日本株式会社」よりも「チャイナ株式会
社」なのである。


4.外貨準備高世界一は「世界一の金持ち」?中国の外貨準備高が204兆円(2009年末)となり、日本の89兆円の2倍以上
となった。ここから「中国は世界一の金持ちになった」と言う見方が喧伝
されている。これも真実にほど遠い誇大妄想的な見方でしかない。


三橋氏は「国家の金持ち度」を計る指標としては、対外純資産か、せめて
外資産の総額で比較しなければならない、と指摘する。
外資産は、外国への投資も含めて、その国が海外で所有している
資産の総額であり、外貨準備高はその一部に過ぎない。


外資産で見ると、日本の対外資産は562兆円で、中国の294兆円の2倍
近い。外貨は少ないが、アメリカや欧州などに投資している額が大きい。


純資産とは、その国が海外でもっている資産の総額から、他国が国内に
持っている資産を引いた額である。これがプラスだと、外部に貸したり、
出資したりしている額の方が多い金持ちである、ということになる。


この純資産で見ると、日本は249兆円で、中国の129兆円のやはり2倍近
い。日本の純資産は20年近く世界一を続けている。逆に中国は外貨準備
高は204兆円もあるのに、純資産が129兆円ということは、その差額、
75兆円は海外から投資を受けた分ということになる。



5. 中国は「世界の貸し工場」
中国は外貨準備高こそ204兆円と世界一だが、それ以外の純資産ではマイ
ナス75兆円である。それに比べて、日本は外貨準備高こそ89兆円だが、
それ以外の資産がプラス473兆円もある。この数字に、両国の国際経済に
おける対照的な姿が現れている。


日本もかつては輸出一点張りで、膨大な外貨を貯め込んでいたが、
海外からの批判を受け、変動相場制に移行して大幅に円を切り上げ、
また輸出を現地生産に切り替えていった。


変動相場制により、円が高くなって、貿易のバランスがとれ、
外貨準備高が調整される。
また海外生産が増えることによって、輸出が減り、
現地の雇用確保に貢献した。
海外での総資産が多いのは、こうした投資の結果である。
こうしたことができるのも、家電や自動車その他、
独自の技術を持っていればこそである。


実際に中国の輸出に占める外資系の割合は2008年度で55.4%もある。
中国の輸出の過半は、日本企業や欧米企業が中国に投資して、
工場を作り、そこから日本や欧米に輸出しているのである。
本講座なりに形容すれば、中国は「世界の工場」というより、
「世界の貸し工場」なのだ。


中国が「貸し工場」を続けるには、欧米の非難を浴びつつも、
元安を続け、「外貨準備高世界一」の袋小路に留まっているしかない。
これが「世界一の金持ち国」の実像である。



6. 中国は世界一の経済大国になる!?
「中国は10年後にはGDPで米国を抜いて、世界一の経済大国になる」
という予測がある。
過去10年の平均成長率(中国10.5%、米国1.7%)
をそのまま延長すると、2022年に米中のGDPは逆転するという。


しかし中国が今までと同様の経済成長を続けるには、
大きな前提条件が必要となる。まず前節で述べたように、
中国はコストアップを避けるために、元安政策を続けなくてはならないが、
すでに現時点でも貿易赤字を抱える米国が痛烈に批判をしている。
あと10年も元安を続け、ドルをさらに貯め続けることができるだろうか。


また外資系企業にも、今までと同様に対中投資を続けて貰わねばならな
い。そのためには低賃金を続け、また無尽蔵に労働力供給を続けなけれ
ばならない。


しかし、三橋氏は中国の労働力人口が2013年にもピークを迎え、
その後は減少していく点を指摘している。
人口抑制のための一人っ子政策により、中国は世界最速の
ペースで高齢化しているからである。


労働力供給が頭打ちになれば、かならず賃金は上昇する。
その分、低コストの貸し工場としての魅力は薄れ、
海外からの投資は減り、従来ペースの成長はできなくなる。
すなわち「貸し工場」で外資企業頼りの成長
モデルでは、このままあと10年も成長が続くはずがない。



7. 中国経済の実像
残された道は、国民が豊かになって、国内消費が伸び、
それが投資と国内生産を押し上げて、さらに国民を豊かにするという
善循環を実現していくことである。


それこそが日本が高度成長を成し遂げたプロセスであった。
三橋氏は「日本経済は輸出依存で成長した」とする見方を
データで否定している。


高度成長期を通じて、輸出はGDPの1割程度であり、民間最終消費は
常に6割の水準にあった。池田内閣の「所得倍増政策」により、民間消
費と投資が両輪となって長期間の健全な成長が維持できたのである。


まず中国の輸出のDGP比率は、2009年で26%、ピークの2006年では
39%もあった。すなわち、輸出依存度で言えば、日本の2.5倍から4倍
という「超輸出依存型」である。


また個人消費は2000年まではGDPの45%ともともと低い段階であった
のが、2009年には35%まで下がってしまった。逆に投資は2000年が34%
で、2009年には46%にまで上昇した。政府の公共投資と不動産バブルの
影響である。


民間最終消費が異常に低いのは、社会に構造的な問題があるからだ。
まず年金制度が未成熟である。中国の年金は「養老保険」と呼ばれてい
るが、その加入率は、3億人を超える都市部労働者で半分強4億7千万人
の農村労働者では1割程度しかない。老後のため、せっせと自分で
貯金するしかない。


医療保険も未整備である。中国で所得最高水準の上海での可処分所得
月2万円程度だが、病院の平均医療費は診療1回当たり約6千円。一回、
医者にかかると、月収の3分の1近くがふっとぶ。


さらに中国国内の所得格差は凄まじい。人口の上位10%が国民全体の所
得の50%を占めている。日本では29%である。一部の突出した富裕層は、
ベンツを買い、海外旅行を楽しんでいるが、下層階級は毎日の生活で
手一杯である。


日本のように膨大な中間層が、カー、クーラー、カラーテレビを買い求
める、という国民全体で豊かになっていく、という健全な成長ではない。


こうした現在の状況を見れば、個人消費と投資が両輪となった健全な
日本型高度成長モデルに転換するのは、至難の業であろう。
そして中国は発展途上国のまま、史上最速で高齢化社会を迎える。


これが「日本を抜いて世界第2位の経済大国」「外貨準備世界一の金持
ち国」そして「いずれはアメリカを抜いて世界一の経済大国へ」と喧伝
されている中国の実像である。  (完)

        

ということで中国の実態を知ると、何も戦々恐々とすることはない
騒がなくともいいように思える。
読んでくださった皆さまはどう感じられただろうか。


長文に最後までおつきあいいただいたことに感謝します。