お雛さま

「飾りましたぁ」
2月に入ってまもなく画像付きの携帯メールで娘が知らせてきた。
七段飾りのお雛様を飾ったというのである。
場所を取るのと、出したり仕舞ったりを億劫に感じ
昨年まで上段だけ飾っていたのを今年初めて全部飾ったらしい。


七段飾りのお雛様は、娘が生まれたときに祝ったものであり
結婚するときに持たせてやったものだ。
名のあるものでもないけれど、そのころ
まだ旧くて、だだっ広い家に住んでいて
場所を取ることなど考えたこともなかったから
七段飾りを選んだのだが、最近はコンパクトで
豪華なお雛様が主流になってもいる。
マンション住まいの彼らが果たしてこの七段飾りを
飾ってくれるかと案じていた。



娘は、自分のために与えてもらったお雛様を
わが娘、花楓(かえで)のために飾ってあげることの喜びを大切にしている。
娘夫婦が大事に思ってくれていることがこちらも嬉しい。


花楓(かえで)は、その七段飾りのお雛様が自分のために
飾られていることを認識していて、その前に立つと
にこにこと「ママ、あイがとぉ〜」と礼を言っているようである。
もっとも、半月ほど日の目を見ているお雛様は
潤平とかえでの遊び道具に加わっており
手の届く下段の牛車や、女官が持っているひしゃくなどの小物を
自分のポシェットに入れ持ち歩いたり、五人囃子のつけている冠、
帽子などは剥ぎ取られてしまっているという。
七段飾りは、祝いの日を前にゴチャゴチャになってしまったと
ママは嘆いている。


赤い毛氈もシミが出来たりしているので、買い換えようと
ネットで検索すると、30年以上も前の会社は姿を消しており
同じブランドの小物も合わせてオークションに売り出されているらしい。
時代は推移しても世の中、便利になったものと思う。
娘からまたその娘へ・・・
親子代々使えるものは、気持ちがほっこりする。


ともあれ、節句を祝うささやかな歳時があとあと心に残る。
かえで、健やかに育ってね・・・ばぁばも願う。
孫のかえでの姿に娘の幼いころを重ね、思いを馳せている。