映画「阪急電車15分の奇跡」

阪急宝塚駅から西宮北口駅を経て阪急今津駅までを結ぶ
わずか14分のミニ路線である阪急今津線というのがある。


阪神地域に住んでいる人ならば、見慣れた建物や場所が
出てきて、それだけでも興味をひくかも知れない。
有川浩の小説「阪急電車」が映画化されている。


その宝塚 - 西宮北口間の8つの駅を舞台とし、
乗客たちの目を通して、偶然同じ車両に乗り合わせた人々の
人生を映し出していく物語である。


宮本信子


職場の後輩に恋人を取られ、その報復としてウエディング姿で
披露宴に出席する女性(中谷美紀)
会場から追い出され、花嫁衣裳のままの電車に乗った彼女は
乗客の好奇の対象になる。


恋人の暴力を我慢している女子大生(戸田恵梨香)。


PTAの派手な付き合いを断りたい主婦(南果歩)……。


PTAの「大阪のオバサン」風のグループの騒々しいこと。
なんとリアルだろうか、と思わずわが身を振り返る。
この年代の厚かましいこと、怖いもの知らず、
世間知らずの感が拭えない・・・。
電車のなかで乗客が顔をしかめている。


それぞれが抱えている悩みや苦悩を、わずかの電車の同席で
嗅ぎわけ、宮本信子扮するお節介おばあさんが
やさしく問いかけ、聴いてあげたりする。
電車の中での、知らない人との関わりなど
現実には起こりえないことかも知れないが
案外、身近にあるのではないかと思ったりもする。


宮本信子が「マルサの女」のような威勢のいい役ではなく
上品で、知的な老婦人を演じているのがいい。
きっぱり信念を持った助言が相手の心を揺さぶり人生を
変えていくきっかけにもなる。

性暴力や虐待や職場での人間関係・・
人知れず蓄積した苦悩を何かのきっかけで
誰かに話し、自己の修正をできるよすがになれば
こんなに嬉しいことはないだろう。


そんな飄々とした他人のことに
的を射た的確な助言は心に染みる。


うるさいオバサンたちに切れた彼女がじんわり、
ゆっくり啖呵を切りながら諭していく最終場面が、
見ていてスカッとする。
それぞれのエピソードは時に笑いがあり、じわりと涙も誘う。



山吹