隠蔽体質と人命軽視は重症だ −中国事故対応―

“チイチイパッパ チイパッパ”の雀の学校の声ならぬ、
やかましいクマゼミの大合唱で、毎朝起床する。
それに続けとばかり、アブラゼミが加わるので暑さを覚える。


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百日紅(サルスベリ)


先週のマスコミは、隣国の鉄道事故の報道で連日大合唱が響きわたっていた。
それにしても政治と技術に疎いわたしにも、中国の事故への対応と
その処理には、いささか驚いている。


事故車両を直ちに埋めてしまい、2日後には破損設備が修復されて
従来通りに列車が走行し、また賠償交渉の決着を当局がせまっている。
これは一体何なの?
日本の常識と中国の常識の違い(政治体制)が
ここには如実にあらわれているように感じる。


政府は当初発表の死者数35人をかたくなに守ってきたが、
月末には40人に訂正した。
もっとも上海メディアグループの東方衛視は、死者は63人と伝えている。


中国での事故の死者は35人と決まっている。
河南平頂山の炭鉱事故の死者は35人。
重慶の大雨による死者も35人。
雲南の大雨による死者も全省で35人。


なんで36人以下なのか? 
死者が36人を超えると当該市の共産党委員会の書記長が免職になるからだ。
なにしろ書記長は当該市の市長より上席にあり偉いひとで権力者なのだ。
だから死者数が36人を超えないことは決まっている。
日本では考えられないこうした珍現象(当事者にとって死活問題)が
面子(メンツ)国家の中国には多くあるようだ。


ひるがえって我が国はと改めてみてみると、
飼料のワラによる牛肉の放射能汚染、それが腐葉土までに
及んでおり、連日その報道の大合唱である。
牛の出荷停止は福島から始まり、宮城、岩手にまで及び
今朝は、栃木県産の牛になった。


主務官庁である農林水産省は、稲わら汚染まで考えが
及ばなかったと発言している。
まるで漫画だ。
放射能汚染は、メルト・ダウンした原発事故では、
あって当然であるが、政府の隠蔽が思わぬことから
露呈することになった。


東北大震災で発生した東電福島第一原発の事故以降、官房長官、
経産省安全保安院をはじめとする政府や機関と事故の
当事者である東電から数多の発表がなされた。
あれから約5ヶ月に至らんとする今日、国民は
『真実は隠されている』と確信するようになった。
政府を信用できないのだ。
これでは日本はオシマイだ。


隣国の民は『先ず政府の言うことを信ずるな』と親から学ぶときいた。
これでは日本は中国と何ら変わらない。
かたや『共産党一党独裁である』と非難と揶揄して言論人は書くけれど
自由主義国家である日本は一見、民主主義体制であるが
実態は独裁国家に似たようなものである。


7月31日Y紙の社説の表題は、
『隠蔽体質と人命軽視は重症だ。−中国事故対応―』と中国を誹謗している。
これでは『目糞鼻糞を笑う』ではないか。


経産省原発・安全保安院は、4月には名称を「危険・隠蔽院」に変えたと
思っていたが最近では「原発・奨励宣伝院」であったと思わざるをえない。


大震災と原発事故は、日本の隠された原発と電力事業の永年にわたる
闇をじょじょに明るみにしているのではないかと感じている。



百日紅(サルスベリ)