不肖の息子と、つれない母

近隣の町、岸和田市だんじり祭りが終わってほっとしている。

大阪・岸和田市の「岸和田だんじり祭」が
17日と18日、開催され多くの観光客でにぎわった。



この時期になると、わたしは落ち着かない。
『大工方』として参加している愚息のことが心配でならないのだ。
荒っぽいだんじりは、怪我人が出たり、死者まで出ている。
終わって心底、安心している。



『「岸和田だんじり祭」は五穀豊穣を願って、
大阪・岸和田市で江戸時代から300年以上続く祭りです。
17日は、35台のだんじりが参加し、ねじり鉢巻に
はっぴ姿の若者たちが、「ソーリャ、ソーリャ」と
いうかけ声に合わせて勢いよくだんじりを引き回し、
市内を駆け抜けています。高さがおよそ4メートル
あるだんじりの屋根では、「大工方」と
呼ばれる男性が両手にうちわを持って、華麗な舞を披露していました。
そして、祭りの見せ場の交差点を直角に曲がる「やりまわし」では、
重さ4トンほどのだんじりが車輪をきしませながら
曲がりきるたびに、沿道の見物客から歓声が上がっていました』


ということがNHKの放送でも取り上げられていた。
(10月から始まるNHKの朝ドラ「カーネーション」の
舞台はこの岸和田である)



最近のギャラリーは数知れず、人気のだんじりである。
地元のケーブルテレビなどではもちろん、派手に宣伝し
繰り返し放送される。


だんじり祭りに関心のないわたしは、わざわざ見に行くこともしない。
あの混雑ぶりがいやなのと、じっと30数台のだんじりの通るのを
炎天下で待ち構えて時間を過ごすことに耐えられないのだ。
確かに数トンもあるだんじりと挽き手がどーっと
走り込むさまは、恐ろしいほどの迫力である。
感動すらある。
一体感もある。
でもやっぱり好きではないのだ。


しかし、来年はいよいよ行かねばならないかと覚悟している。
だんじりキチガイの愚息が来年、役を降りる。


屋根の上で踊る危険な「大工方」の役を数年担ってきた。
屋根で踊っているように見えるのは実は、
だんじりの方向を決める誘導のような役目があるらしい。


仲間うちではその役が「花形」らしく、
諸条件を満たさないと容易に就けないという。
そんな大層な役を地元の人間でもないわが愚息に
どうして白羽の矢があたったのか、定かではない。


超地方人の息子は会館の雑草引きはもとより、寄付集めや、夜回りなど
人一倍熱心にやる性格ゆえかと、思ったりしている。
もっとも彼はブラスバンド好きで、超遠距離のY校で
ユンフォニウムを吹いていた過去がある。
まったく仕事もこれぐらい熱心に取り組むと
出世も早かろうにと、母は地団駄踏むばかりである。


その『大工方』を来年、引退するらしいが
悲しいかな、わが家族は嫁さん以外その雄姿をみていない。
「役の最後の年は観覧席を用意するから是非見てくれ!」と
たっての愚息の頼みである。


たまにはカメラに収めてやろう。
覚悟を決めて観に行かねばと、冷めた母は心しているところである。