量より質

先日、友人二人とランチを摂った。
3人の顔合わせは10年ぶりぐらいだろうか。
賀状で「今年こそ会いましょうねぇ」などと風呂屋の
釜 のごとく毎年、言い募っていたのをやっと実現させた。
3人は、子どもが小さかったころの稽古仲間である。


お互いを懐かしがっていると、一人が浮かない顔をしている。
昨夜から下痢が続き、体調がいまひとつなのだという。


彼女のお嬢さんは国際線の客室乗務員をしており
フライト10,000時間達成とかで、会社から表彰された。
その祝宴を家族でするためステーキハウスに出向いた。
「180gの肉を食べたのだけどそのあとから、
ずっとこんな調子なのよ」と胃をさすっている。
肉の質が良くなかったのか、彼女の胃が受け付けなくなったのか。


似たようなことは、わたしも経験している。
自宅でたまにシャブシャブや、すき焼きなどしても
食卓につく前はおいしそう!と食欲いっぱいなのに、思ったほど入らない。
無理して食べるとあとから大変、胃がもたれて気分が悪くなる。


年齢を重ねた身体が退化しているのか
最近はこのようなことが顕著になり、
食べものは「量より質」だと実感している。


食材を吟味した、いいものを少しだけ食べたい。
肉も若いときほど食べられないから
「上質の肉を少しだけ」と言うことになる。
控えて買っても余ることがあり、そんなときはシチューなどに入れる。
まろやかでコクのあるそれができ、俄然おいしい。


先日も大阪の本町まで買い物に行き、昼食を中国料理店で摂った。
その店はかつてのオフィスの近くにあり、たまに仕事仲間と訪れていた。
重厚な造りの広い中華料理の店内はおしゃれで
昼食には「海鮮焼きそば」なるものが人気メニューだった。
割高だが魚介類がたっぷり入って美味である。


久しぶりに訪れると、そこは様変わりして、
昼食は格安セットメニューのみになっていた。
若いビジネスマンが列をなしている。
順番を待つほど賑わっている。
「海鮮焼きそば」の他にスープやご飯やサラダがてんこ盛り。
一見すると飛びつきそうなほどお値打ちだ。


ところが食べてみるとかつての味は、どこへやら・・・。
どれもまずくて食べられない。
サラダもドレッシングも粗雑で野菜がくたびれている。
ご飯もパサパサで食べられたものではない。
肝心の「海鮮焼きそば」も、かつてほど魚介が入っていない。
ずいぶん手抜きをしているなぁと感じた。


量が多くなくてもいいから、きちんとした食材のものを食べたい。
「単品でもこんなにまずいのかしら?」と思いつつ
二度と足を踏み入れることはないと思った。
ファーストフード店ではないのだから「安くて大盛り」はいただけない。


年齢を重ねると、目も口も妥協できなくなっている自分を感じる。



日々草・再登場