iPhone4Sを遺して逝ったジョブス氏と,日本

きのうのTVニュースは朝からiPhone4Sの販売を
賑やかに伝え、東京銀座店は3日前から行列が始まっていたという。
またN紙夕刊には、写真入で「店頭に長蛇の列」と報じている。


去る6日(米国では5日)アップル社の共同創業者であった
スッテーブ・ジョブス氏が56歳で逝った。
当日の米国のTVニュースの冒頭でアナウサーは
「エディソン、ダ・ヴィンチに匹敵する天才ジョブ氏…….」と
興奮して語っていた。
また米国の大統領までが追悼メッセージを出すほどである。


日本のニュースも彼のことで持ちきりだった。
iPadiPhoneも持っていないわたしには
その価値はあまり、わからない。
アナウサーが指摘したエディソンの価値についても、詳しくは知らない。
しかし彼の電気の発明は、ジョブス氏がいくら逆立ちしても
敵うものではないと思う。


またモナ・リザを遺したレオナルド・ダ・ヴィンチ
絵画での偉業や人間の解剖など科学の世界での
人類への貢献も、敵うものではないと思ったりしている。


でもジョブス氏が禅に傾倒し、結婚式は曹洞宗
僧侶(永平寺)乙川弘文が代表だった寺院で
挙式したことには、親近感を覚える。


また新聞によると、故人は葬儀も仏式を希望しているとのことである。
そうした彼の内面的なところでの禅への希求が
彼の画期的な原動力となって、スピーチで言っていた
「直感力」の基になっていたのではないかと思えてくる。


紙面によるとアップル社の上場株価の時価総額
米国の最大企業である石油会社エクソン・モビール社を
超えて全米で1位、すなわち世界で1位とのことである。


しかし・・・
この巨大企業が販売するiPadiPhoneなどは
米国では生産されていない。
したがって製造に要する雇用は米国にはない。


製造のすべては台湾に本社がある世界最大の
生産被委託会社(ファウンドリ)に注文され、
その会社の中国にある工場で生産されていると聞く。


昨年12月時点でのiPhone(前機種)の米国の輸入価格は178ドルである。
しかし中国での組み立て代金は1台当たり6ドル。
使用されている部品の生産国は、日本34%、ドイツ17%、韓国13%、
米国6%、中国3.6%である。(2010.12.6日付けWSJ紙)
利益を享受しているのは日本企業なのである。


日本企業は、どっこい「健在」なのだ。


そうした折、10月 8日付けN紙の「人こと」に
先見性に富んだ記事をみつけたので紹介したい。

電気自動車ではバッテリー、薄型TVではフィルムが重要になってきており、
『製品の競争力は素材で決まるようになってきた』と
三菱ケミカルHDの社長、小林喜光氏は語る。
さらに同氏は「今後世界を変えるのは、米アップル製品のような
ソフトウェアの強さではなく素材革命だ」と付言する。


日本のマスコミは、常に自虐的な記事か悲観的な
ニュースを喧伝して耳目を挑発する。
しかしこの発言をぜひ声高く伝えてほしい。

今日の米国の不況は、歌を忘れたカナリヤならぬ、
「モノ造りを放棄した米国」の『国のかたち』が因では
ないか、と女のわたしにも思えるのである。