黄色いバラに囲まれて

いつだったか、シニア・ナビの「おしゃれな猫」さんが
赤いバラについての微笑ましいエピソードを綴っておられた。
バラについての蘊蓄になると、わたしも披瀝したくなる。


加藤登紀子の「百万本のバラ♪」は大好きな歌で
あの低いトーンで涼やかに、さらりとした切なさがいい。
息を切らせながらかつて、わたしもカラオケなどで歌い
十八番にしていたものである。


百万本のバラに遠く及ばないけれど、
「誕生日にはバラ!」という定番がわたしにもあった。
ずっと、長いあいだ夫が贈ってくれていた。


ビロードの濡れた唇のような真紅の薔薇も好きだが
高貴な感じの、当時まだ珍しい黄色いバラにわたしは惹かれていた。
その「黄色いバラ」を、誕生祝いに夫にリクエストしていた。


その贈りものは、彼が病気になっても続き
なけなしの小遣いをはたいて奮発してくれていた。
無骨な夫がどんな顔をして花屋さんで、薔薇の花束を
求めてくれたのかしらん?と今でも思う。


葉っぱが、しゃきっと上を向いた茎の太い
生きのいい黄色いバラにラッピングを施され
同系色の大きなリボンと、メッセージカードが隅で、威張っていた。
「なかなかやるなぁ」と素直に喜び、言葉を返したものである。


30代ごろからの誕生日の写真を見ると・・・
当時ふっくらとした顔立ちのわたしが、満面の笑みを浮かべ
リビングのピアノの前で花束を抱えている。
ドライフラワーにして壁面を飾った花束も数々ある。
時代だなぁ・・・。
そういうロマンティックなときも確かにあった。
今ごろあの世からカーテン一枚隔てて、だんだん年を食ってきた
わが妻を見ているだろうか。


おしゃれな猫さんは若いころ、アメリカ人のボーイフレンド?から
赤いバラの花束をひと抱えも贈られて、
知人、友人に差し上げた・・という。


かくいうわたしも、似たようなことを経験している。
40代のころ、わりと仕事人だったわたしは
東京出張などというのも珍しくなく、上京すると連絡を取る知人がいた。
仕事を介して知り合った方で時間の都合がつくと
食事につきあってくれたりした。


その知人からあるとき、誕生祝いと称し職場に
りっぱな「黄色いバラ」の花束が届いたのである。


勤務時間中、花瓶を代用する筆洗いやバケツに
無造作に放り込んでいたが、部署を訪れる他のひとに
さんざん冷やかされた。
家に持って帰られないので、まわりの皆に1本ずつ
差し上げて喜ばれたものである。


贈りものに、花はいい。
他家を訪問するときに菓子代わりに持っていくこともある。
素朴な可憐な小花も好きだが、華やかなカトレアやバラもいい。


息子や娘から誕生祝いに何がいいか訊かれると
やっぱり「花」にしていることが多い。
ここ数年「クリスマスローズ」の鉢植えをねだったりしていた。
自分で買えそうもないない、大振りのそれをプレゼントしてもらう。
それらは立派に?枯らしてしまい今は鉢だけが、無残に残っている・・・。


11月はわたしの誕生月だ。
娘から先日何がいいかと、訊かれ
「ロベリア」の寄せ植えにして欲しいと返事した。
ロベリアはこのあたりでは定評のある園芸店である。
その店の寄せ植えは、珍しい草花とアレンジが素敵でおしゃれだ。
少し高価だが長いあいだ楽しめるので、それに決めた。


黄色いバラは、夫との思い出だけにしておこう。