安保徹教授・癌の発症と治療は、患者の生き方次第である。

「現代医学で原因不明の病の多くは、患者が偏った生き方をしたため、
自立神経と白血球の両者の分布バランスが崩れて発症する」と
新潟大学・大学院医歯科総合研究科安保徹教授は語る。

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昨年5月學士会館で同教授が講演した要旨が
同会々報(2011-VI)に掲載されており、
その内容は示唆に富むゆえ、勝手ながら簡略して紹介したい。
長いけれど、ひとつの情報として最後まで読んでいただけると嬉しい。



能力を超えた生き方をすると病気になる。
近年医師不足が論じられているが、医師不足の原因は日本人が
病気になり過ぎるからである。
先天的異常による病気以外で大人が罹る殆どの病気は、
本人が能力を超えた生き方をした時に発症している。


人の身体には、「交感神経と副交感神経」の2種類の『自立神経』がある。
昼間は「交感神経」が働き、脈を増やし血圧や血糖値を上げ活動する。
夕方からは「副交感神経」が働き、脈を少なくし血圧や血糖値を
下げて休息や睡眠を促す。



忙しくして睡眠時間を削る生活や悩み続ける生き方をすると
1日中「交感神経」が刺激されて興奮状態が継続し
不眠になり不安な心境に陥る。こうした「交感神経」の
緊張は血圧と血糖値を上げて心臓や血管に負担をかけることになる。
この様な状態が1年2年と継続すると狭心症や不整脈になる。
更にその症状は心筋梗塞くも膜下出血脳卒中を起こすことになる。


「交感神経」を緊張させる原因。

「忙しさ」「悩み」に次いで「交感神経」を緊張させる原因は「怒り」である。
怒り狂う時の血圧は220 – 230mmHg.に上昇する。


次に挙げる原因は「寒さ」である。日本の寒冷地である
青森や秋田には脳卒中が多い県である。
その次は「目の疲れ」であり、特に真夜中まで
パソコンで仕事をすることはこの危険が伴う。


最後は、「薬の大量摂取」であり、
薬は化学合成された毒物なので肝臓で解毒する
必要があるが、

その際大量のエネルギーを消費する。
「薬の大量摂取」によって脈が増えて興奮し、
不眠や高血圧がおき更に睡眠薬や血圧の薬が
必要となる悪循環が起きてしまう。


「副交感神経」に原因がある場合。
病気の7割は「交感神経」の緊張で発症するが
残り3割は「副交感神経」の問題で発症する。
これは日本が豊かになるに連れて生じてきた現象である。


「副交感神経」は休息や睡眠などリラックスを司るが、
「副交感神経」に偏った生き方をすると、
ひ弱で姿勢が悪く疲れやすくなり、
「交感神経」が司る集中力にも影響を及ぼすことになる。



要は「交感神経と副交感神経」のどちらにも偏らない生活をすることが肝要である。


『白血球』の働き−「顆粒球」と「リンパ球」
病気を避ける上で『自律神経』に次いで大切なのが『白血球』である。
『白血球』は、体中に侵入した細菌やウイルスを排除している。


『白血球』の 60% は「顆粒球」で、細菌を処理し
化膿性の炎症を起こして治癒する。
残り40% は「リンパ球」であり、色々な食べ物によって
運ばれる異種タンパク、ウイルス、リケッチアなど
小さな異物を抗体で凝集させて無毒化する免疫系である。


『自立神経』のバランスが良い人は顆粒球」と
「リンパ球」の比が大体60対40
であり『白血球』は『自立神経』の支配を
受けて調節されていることが15年前に私は気付いた。



「顆粒球」はアドレナリン受容体を持ち、
興奮したときに交感神経末端から出る
ノルアドレナリン”と副腎から出る“アドレナリン”によって数が増える。


一方「リンパ球」は“アセチルコリン”受容体を持ち、リラックした生き方をして「副交感神経」が刺激されるとその数が増加する。


二種類の『自立神経』と二種類の『白血球』の関係。
野生動物が「顆粒球」を増やすのは「交感神経」を
緊張させて活発に活動させている時で、細菌の侵入に備えるためである。
一方「リンパ球」を増やし「副交感神経」を働かせるのは
リラックス出来る食事時である。


人体にはリンパ節、胸腺、脾臓などリンパ球の循環や
産出を行う器官が備わっている。
これら免疫器官は、進化の過程で軟骨魚類あたりから出現し始め、
原初の生物のリンパ球は消化器官の周りに存在していた。
そのため消化器官の機能全般は、リラックスする時に働く
「副交感神経」が支配している。


両者の関係はバランスが取れているが、忙しく悩みを抱える生活をしたり、
逆に美食と運動不足の偏った生活を送ると、「
顆粒球」や「リンパ球」のいずれかが過剰になり病気が発症することになる。


ストレスが多過ぎる生き方だと...
「顆粒球」は骨髄で作られ血液中を流れ、常在細菌が棲み付いている
消化管の粘膜で一生を終える。
しかしストレスの多い生活をおくる人は、「顆粒球」が
過剰に作られて口から肛門までの消化管の粘膜に運ばれ、
そこに棲み付く常在細菌と反応し炎症を起こす。
その結果、働き盛りで歯周病になったり、逆流性食道炎
糜爛性胃炎、胃潰瘍クローン病、痔などを患う人が多発する。


常在細菌の少ない器官も「顆粒球」の標的になる。
激しい夫婦喧嘩のストレスで内耳が攻撃され女性が
突発性難聴になった例があり、また、三半規管が攻撃され
メニエール病になったり暈(げんうん=めまい)や
吐き気などの症状が続く。
これらは発症は「原因不明」ではなく、全て原因がある。


穏やか過ぎる生き方だと...
「リンパ球」は小さな異物に反応する細胞であり、
穏やか過ぎる生き方を続けると
「リンパ球」が過剰に作られハウスダストなどに
対するアレルギーや過敏症で苦しむようになる。
寒さや紫外線などもアレルギーの原因となる。


30年程前からアトピー性皮膚炎 気管支喘息、紫外線アレルギー
寒冷アレルギー、化学物質過敏症電磁波過敏症など
様々過敏症に苦しむ日本人が増えた。
たった30年で日本人の遺伝子が変るわけではない。
私達の生活習慣や食習慣が変り「副交感神経」が
支配する局面になりやすくなったのである。


様々な組織破壊の病気や過敏症は、このように原因不明ではなく、生き方の問題と繋がっているのであるが、医師は通常、対症療法に始終する。
アトピーならステロイド軟膏を処方し、喘息ならステロイドの吸入をする。
しかしそれでは根本的解決にならない。


二つの生き方の合体である私達
私は10年前から『自立神経』と『白血球』の研究をして
病気の謎を解明してきたが、
3年前から今日のテーマである「エネルギー生成」を考え始めた。


人間は一つの生き物の様ように見えるが、
実は20億年程前に「原核細胞生命体」に
「ミトコンドリア生命体」が寄生して出来た『真核細胞生命体』を
元にしている。
従って人間は、二つの生き物が合体したものが出発点であり
その名残は今もある。


20億年前の地球には酸素は殆ど無く、生命体は
「ミトコンドリア生命体」を持たない
「原核細胞生命体」として、今の細菌と同様に
無酸素で分裂を繰り返してきたのが人間の古い先祖である。


「エネルギー生成」には無酸素系と有酸素系があり、
この「原核細胞生命体」は無酸素で行える
解糖系の「エネルギー生成」を行っていた。


同じ頃、太陽の光を使って光合成する細菌が生まれ
大気中に酸素を徐々に放出した。
今の地球の大気は21%が酸素で残りの殆どは窒素であるが、
20億年前には約2%の酸素が存在し始め、
その結果、解糖系で生きていた古い生命体は酸素による
酸化の害で生きずらくなってしまった。


こうした折、古い生命体には有害な酸素を使って
効率よく大量のエネルギーを作る「ミトゴンドリア生命体」が
進化の過程で生まれてきた。
ミトゴンドリアは、人間の古い先祖である「原核細胞生命体=解糖系生命体」の残した乳酸を求めて寄生を繰り返した。


約12億年前「ミトゴンドリア生命体」が「分裂抑制遺伝子」を持ち込み、
ようやく安定した寄生関係が完成し、両者が合体して
『真核細胞生命体』になった。


ミトゴンドリアという巨大なエネルギー生成工場を獲得して
様々な能力を飛躍的に伸ばして、単細胞生物から多細胞生物へ、
すなわち、カビ・キノコ・酵母などの真菌類、植物、
動物へと進化を遂げていった。


一方ミトゴンドリアを取り込まなかったために進化が
起こらなかった原核細胞のままの生命体もあり、
大腸菌や乳酸菌は単細胞のまま栄養があればひたすら分裂し続け、
栄養が枯渇すると分裂を止めて生きている。


ミトゴンドリアの多い細胞と少ない細胞
ミトゴンドリアが圧倒的に多いのは、心筋細胞、
骨格筋の赤筋、脳神経である。
ミトゴンドリアが一番少ないのは精子で、皮膚細胞、腸上皮など。


二つのエネルギーの生成過程

― 略 ― 


人は一生の中でエネルギー系をシフトさせていく
子供時代は解糖系が優位であるが、大人になるに連れて
1対1に調和していく。
60代から70代の年寄りになると解糖系が縮小して
ミトゴンドリア系が拡大し最後を迎える。


子供時代は解糖系なので瞬発力でキビキビ遊ぶが
乳酸が溜まり易くすぐ疲れる。
エネルギー効率が悪いので10時や3時のおやつも含めて沢山食べる必要がある。
成長とは全身で活発に細胞分裂を起こしていることであるが、
この特質も18-20歳で終わり成長が止まる。


年寄りの皮膚は分裂していない状態で、瞬発力も衰えるので
突発的な事故の対応出来なくなるが、
ミトゴンドリア系が主体になるので持続力は残る。
このため根気の要る仕事が得意である。
最も特徴的なことはミトゴンドリア系のエネルギー効率の良さを
反映して小食になることである。


過度な生き方をすると、無酸素の癌細胞が目覚める
ミトゴンドリアが最も少ないのが癌細胞で、ある意味で
癌細胞は20億年前に無酸素で生きていた人間の古い先祖と言える。


今の医学界では『紫外線、食品添加物、放射線、大気汚染などの
発癌物資が原因となって遺伝子が突然変異を起こして癌を引き起こす』と
言うが、私はそうでないと考えている。
私達は心配事が続いたり忙し過ぎて寝不足が続いたりすると、
低体温や低酸素になる。
ストレスの多い状況下では、20億年前の無酸素の細胞を
もう1回作り出さないと適応できない。


だから『癌は、過酷な生き方に適応するために
20億年前の細胞に先祖返りした現象である』と謎が解けた。


生殖とは、二種類の細胞の合体の再現である
― 略 ― 


癌が発生し易い場所、しにくい場所
人間の古い先祖で解糖系である古い生命体は分裂促進遺伝子、
すなわち癌遺伝子を持ち分裂を繰り返していたが、
ミトゴンドリア生命体と合体した際、分裂抑制遺伝子が持ち込まれた。
そのため心臓などミトゴンドリアが多い場所には癌は発生しない。
反対にミトゴンドリアが少ない分裂細胞、すなわち皮膚
腸上皮やそこに付随した分泌線細胞は癌ができやすい。
これらの場所でもストレスが少なく酸素を豊富に取り込んでいる間は
ミトゴンドリアが分裂を(癌の発症)を抑制している。


ミトゴンドリアが正常に機能しないと、癌が発生する
パンを作る際にはパン酵母に多く含まれるミトゴンドリアの
機能を活性化すると生成された水素と酸素が結びついて水になり、
同時に発生した炭酸ガスによってパン生地は膨らむ。


一方酒やビールは逆に、清酒酵母やビール酵母のミトゴンドリアを
不活性化するために寒仕込みし、ビールやワインは密封して
酸素が入らないようにする。
そうするとミトゴンドリアが持ち込んだ分裂促進遺伝子も
働かなくなるので、分裂が促進されアルコール発酵が進む。


人間が過酷な生き方をして低酸素・低体温・高血糖が続くと


ミトゴンドリアが持ち込んだ分裂促進遺伝子も働かなくなり、
ミトゴンドリアが少ない場所から癌細胞が生まれる。


癌を治すには

今の医学では癌のメカニズムが解明されていないので、
対症療法の治療しかなく日本では年間35万人が癌で死亡している。


しかし私の得た結論は、『ミトゴンドリアが正常に機能しない
ストレスフルな生き方が癌の原因』なのだから、
『ミトゴンドリアが正常に機能する状態』にすれば、
癌細胞が増えないはずである。


最終的に癌細胞を攻撃するのは、一番古いタイプのリンパ球である
ナチュラル・キラー細胞や胸腺外分化T細胞である。
ストレスの多い生活を続け消化管の内部環境が悪化してくると
これらのリンパ球が育たない。


結局、食事が大切なのである。
食物繊維の豊富な野菜やキノコ、未精白の穀物で古いリンパ球を育てる。
そうすれば癌の進行は大体1、2ヶ月で止まる。
そして最終的にリンパ球が働いて退縮まで行くには1年位かかる。


あまり焦らず、ゆっくりと取り組めばよい。
癌細胞は 20億年前の先祖なのだから、あまり悪いものとは考えず
『お懐かしゅうございます』くらいの感覚で付き合えばいいと思う。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
いかがでしょう?参考になりましたでしょうか。
わたしも、10回ぐらい読みました。
それでも半分ほどの理解です。
しかしガンや病気の成り立ちや、予防、食生活について
おぼろげながらわかったような気がしているところです。
自分のからだ、いといましよ。