家族も重荷背負う

親が子を、子どもが親を、そして夫が妻を(介護など)
虐待する事件があとを絶たない
昨今の世相の反映か、リストラ離婚も増えるなど
ぎくしゃくした夫婦や親子間の胸の痛むニュースが多い。


そうしたなかY紙の「結婚指輪してますか?」というコラムを
毎回、興味深く読んでいて、心を揺さぶられる。
そこには泣いたり笑ったりしながら
そして葛藤しながら真摯に向き合う夫婦の姿がある。
胸を打たれていると言ったほうが正しいだろう。


二組の中年夫婦の物語である。


Aさんの夫は夫が脱サラして事業を始めたが
うまくいかず、あとには借金だけが残った。
夫は会社員時代の己の甘さを反省し不甲斐無さに、落ち込む。
妻は、昼間と夜の二つの仕事をしながら家族を養い夫を励ます。
そうして手元にある小資金をもとに
コンビニ経営をやろうと夫にもちかけ、一緒に始める。
夫婦は慣れない仕事に四苦八苦したけれど、やがて
本店にも認められ、一等地での店舗開業を勧められる。
夫は今のところで充分だと新規での開店に
二の足を踏んでいたが子どもたちに背を押され、決心した。


近くに競合もなかったためか、売上は倍になり借金も
予定より早く返すことができた・・・
あのとき投げ出していたら、いまの自分たちはなかった。
何でも一生懸命取り組めばなんとかなるものだと、
子どもや夫に感謝の念で、力強く結んでいる。



またBさんの夫は外国車の輸入販売会社の整備士をしていて
若いころは米国の工場で修業したほどの努力人。
その後、国内の工場長になり平穏な生活を送っていたが
突然のリストラとも思える社内での配置転換を命じられ生活は一変する。


降格され、経験のない販売職に就くことになった。
夫は酒量が増え、パチンコに精を出すようにもなる。
辞めようかとこぼす夫に、妻Bさんは
「思うようにしたらいい。わたしも働く。夫婦でがんばろう」と伝える。
二人の娘も同じ思いで「短大をやめて働く」と言った。


それを聞いた父親としての夫は奮い立つものがあったのか
靴には穴があき、背広のズボンが擦り切れるほど
営業に精を出すようになった。


大きな武器になったのがそれまで培った整備の技術と知識である。
ちょっとした不調をその場で直したり、メンテナンスを
買って出たりして少しずつ顧客の信頼を得ていった。


地道な努力が実を結びトップセールスマンとして、表彰されるまでになる。
工場で仕事に打ち込んだ日々も窮地を救ってくれた。
夫は定年扱いの早期退職をし、最後まで降格のままだったが
会社からもらったトロフィーや盾を大切に飾っている。


夫を助けたいという家族の気持ちがひとつになった時
苦境を乗り越える力が生まれるのでしょう、と担当記者は結ぶ。


どちらも胸を打つ。


今どきは、夫が職を失うなどしたら
「金の切れ目が縁の切れ目」とばかり、さっさと離婚する夫婦もある。
窮地に立たされた夫を励まし、苦労を共にしてくれる妻は少ない。


Aさん、Bさんのような夫婦に育てられた息子や娘は、
家族が力を合わせて生きていく知恵を学ぶ。
逆境にあっても必ず立ち直るだろう。


親が子に残せるものは、目に見える資産だけではない。
こうした親の生き方こそ、大きな財産であるといえる。

久しぶりに涙腺がゆるんだ。