口が重たい・・・

私はもじもじしながら答えた。
私はいったいに口が重い方であった

太宰治 の「苦悩の年鑑」からの引用である。



「口が重たい」は、無口、口数が少ないと解釈するがわたしの場合はそのまま「口や顎が重たい」のである。
理由は、わかっている。


黒柳徹子が「徹子の部屋」で立て板に水のごとく
流暢に話していたのは、昔のことで最近は
入れ歯カチカチが傍目にもわかる感じがある。
見かけは華やかで若いのだが、しゃべり方に淀みがでてきた。





もちろん同年齢の業界人に比べ、数倍トークは上手だし
まだまだ十分通用する話し方は人を魅了する。
長年の訓練の賜物だ。
しかし、以前のような滑らかな口とはいえない。


失礼ながら加齢によるものと「整った歯」のせいではないかと
わたしは勘ぐっている。
インプラントか、義歯か・・・。
彼女の年齢ぐらいになると、それは致し方ないことだろう。


わたしもかつては、自分からおしゃべりを取ったら
何が残るだろうかと思うほど、口がよくまわる方だった。
最近は口の滑りが良くない。


もつれるわけではないが、話し方がもっさりしてきたのだ。
特に「ラ行」や「サ行」の発音が、しにくい。
口から空気が抜けてしまう感がある。
これでは、わがやの3歳の孫の『〜〜ちゅまちゅ「〜します」』を笑えない。
会話中に訊き返されることもある。
相手も聴きとりにくいのだろう。


おまけに早口ときている。
不明瞭な発音とそれでは、無理もない。
だんだんと口が重たくなる。


原因は、2年前の歯の治療にあるのではないかと思っている。
ぐらぐらしていた下の歯数本を一度に抜いて義歯にした。
そうすると今度は上の歯との噛み合わせがよろしくない。
思いきって、そう痛んではいない前歯を削り
見栄えよく整えてもらった。


治療の過程で鏡をみて驚いた!
「ひゃぁここまで削るか・・・」
まるで魔法使いの口元のようにギザギザ歯になっているではないか。
少し後悔した。


治療が終了すると確かに歯並びは、きれいになり嬉しくもある。
しかし前述の「副作用」があるとは思いもよらなかった。
ショックである。
医師に尋ねても埒があかない。
ネットで検索してみると治療により「口が重たくなる」こともあるらしい。


後の祭りである。
かといって今さら元に戻せるはずもない。
大きく口をあけて、顎や口元の筋肉を鍛えるしかないのか。
流暢でなくともいいから、せめて、
もっさりとしたしゃべり方からは卒業したい。


「アエイウエオアオ〜〜」
毎朝、鏡の前で発声練習に余念がない、
そして「ひょっとこ」のように顎や口をねじっている。
妙齢な女?も見られたものではないが仕方がない。
「口軽おんな」を目指すのも大変なのだ。