娘からのSOS!

珍しく娘が助けを求めてきた。
車で10分ほどの距離に住んでいても、めったに頼みごとをしない。


週末は、婿殿の勤務が夕方からであり昼間は家族水入らずで、べったり過ごす。たいがいのことは夫婦で協力して問題解決を図っているが来てくれないか、と言う。


4か月になったばかりの第3子・蒼輔の具合が良くないというのだ。
風をひいたのか、熱と鼻水がひどく、痰がからみ息をしにくそうで一時、息をしていなかった!と物騒なことをいう。
熱だけなら乳児にはよくあることでさほど心配はしない。
でも痰がからみ苦しそうだと聞くと落ち着いておれない!





明け方に救急の診療所に連れて行き、少しは安心したようだが
泣いてばかりで夫婦が交代で抱っこし続けているという。


いつもニコニコと愛想のいい蒼輔がぐったりしている!?


また医者に診せるようなことになれば
潤平たちのこともあるから家に来てくれ、と言うことのようだ。
ふだんは、ぞろりとくっついて「ママと3人の子どもたち」は
行動しているが、さすがに今回はそれどころではなさそうだ。


夕方行くと、朝方に飲ませた薬が効いてきたのか
蒼輔は、機嫌良く赤ちゃんラックに収まっていた。
このラックがユラユラと動きに合わせて揺れるので彼のお気に入りである。


少し熱っぽい顔をしている。
けれど、ばぁばの顔を見るとニッコリして
手足をばたつかせ、歓迎してくれる。
そのうちキャッキャッと笑うようになり、少し安心した。


潤平たちから手を握られたり、ほっぺにチュウをされたりは
さすがに嫌がっている風である。
大人でも体調が悪い時は、あまり触られたくない。
モノ言えない赤ん坊は、泣くことでしか訴えることができない。
よほどしんどかったと見える。


「朝の4時ごろからずっと泣きっぱなしで
潤平もかえでもみんな起きて、寝ていないのよ〜」疲れた顔で娘がいう。
部屋の中も乾いた洗濯物が散乱し、キッチンの流しに洗いモノが
積まれていて、余裕のなかったことが伺える。


ママは、ばぁばが来たことで安心して洗濯物を片づけたり
キッチンでの作業にかかった。
潤平やかえでと、トランプをしながら傍らで蒼輔も仲間に入れてやる。
ニコニコとお兄ちゃんや、おねぇちゃんのしぐさを見ている。
平和で、たおやかな時間が流れる。


子どもというものはいつ急に発病するか、わからない。
親や家族はそのたびにオロオロし、夜も眠れないほど案じる。
家族なればこそ、である。
そんなことを繰り返しながら大きくなる。


赤ん坊が一晩中泣き通しだと、子煩悩な親でも疲れてくる。
どうしたらいいか、わからなくなるだろう。
ましてや近くに、親や頼りにできる者がいないと一層不安は増幅される。


伴侶が単身赴任や、企業戦士ばりばりで家庭を顧みる余裕もなく
育児に協力できる環境でないと母親ひとりに負担がかかる。
育児ノイローゼにもなりかねない。
「子育ては、絶対ひとりでは出来ない!わたしは恵まれてるわ〜」娘はいう。
幸いにも周りに甘えられるひとがいて助かっているようだ。


実際、婿どのは子煩悩で順次、子どもが生まれた時、
おむつを替え、あやし、たっぷり遊んでやっている。
ママ友や、夫の義姉とも親しくしており、何かのときには
支援してもらっているようである。


遠くの親戚より、近くの他人だ。
日ごろからコミュニケーションを取り、いい感じの関係を
結んで置くことも子育てには欠かせない。


とりあえずは大切な蒼輔が、大事に至らなくて良かった。
ばぁばは胸を撫で下ろしている。