左手で拳を、右手は握手を、民には拳のみを知しめる千変万化の4000年

歴史の教科書に載っていた平家と源氏の『富士川の戦』を思い出した。
この戦は、平家軍が決戦前夜に源氏軍の炊事の火を源氏の松明と思い込んで大騒ぎし
また夜半には沼にいた多くの水鳥がいっせいに飛び立つのを源氏の襲撃と勘違いし、
大慌てで陣を放棄して逃げてしまった故事である。



唐突に、この故事に行き着いたのは、昨今の中国の一連の反日デモに起因している。
表層的事象から眺めるマスコミや、中国人の性向に鈍感なTVのコメンティターは
平家の武者のように右往左往して、羽音を襲撃と捉え
『現地の日本人学校は休校にした』
『危なくて市街に出られない』
『中国は日本の最大の輸出国なので市場を失う』
『観光客が来ないので観光業界には閑古鳥が鳴く』と騒ぎ立てる。


確かに唯我独尊の人民日報はその傘下の『中国経済週刊』を特集で組み
『中国の現在の経済状況と力量で日本を制裁することは疑う余地もなく可能だとし
「輸入・輸出・サービス業・直接投資」の4つの領域から制裁に着手すべきだ』と
提言している。


右往左往するのも確かに、理解できる。
しかし今、大切なことは中国発信の策に乗ることは相手の戦術に
嵌ることだと自覚することである。
また極めてうがった見方であるが、この騒動は『中国の脅威を日本人に改めて認識させ
 オスプレーを受け入れさせるために』米国が仕掛けたという説もある。
(そもそも尖閣の買収問題は石原都知事がワシントンで
突然言い始めた事実は不可解である)


さて、日本は敗戦の廃墟から明治と大正の世代が主導されて経済大国にのし上がった。
昭和の世代(昭和元年―15年)が主導する1980年代になると、
目標を失った国家のように彷徨し始め、単に安価の労働力を求めて生産拠点を
中国に移したり、13億人の市場を求め進出していった。


一方で厳しい社会情勢の中で競争を嫌う若者までが、その尻馬に乗るように
『中国に行けば何とか食える』とばかり、かつて満州に出かけた
古人のようになびいている。
そうした王道楽土(?)の中国全土で、突然の反日デモが発生してしまったのだ。


一連の反日デモは、相手の左手の拳であると冷静に受けとめながら
中国との経済的不利益は我慢しなければならない。
もっとも昨今は、我慢を忘れた日本人ばかりになってしまった。


かの国の4000年の歴史を読めば、いつもこの種の騒動は起り
為政者が民を誘導していることに気がつく。


こうした騒動や大きな乱(黄巾の乱、紅巾の乱、太平天国の乱、義和団の乱など)は、
時の政権(王朝)を倒している。
また卑近の例としては、2002年の日中国交正常化30周年の折に
小泉首相が靖国を参拝したことで大きな反日デモがあった。


それにしても中国の騒乱やデモは、何年たっても成長しないとつくづく思う。
前述した義和団の乱を扱ったハリウッド映画『北京の55日』は
うすら覚えながら、その騒乱の形態は先日のデモも同じで、
この国ではデモでさえも進歩していないことに驚く。


一方、日本では戦後の新憲法の許にいろいろな自由が保障され、
それぞれの時代を背負ったデモがあった。
少ない記憶と映像を見る限り、デモは時代とともに
精練されてきているように感じる。


変幻自在の民族は、左手の拳の陰で利を獲る術を決して忘れず、
右手(利き手)で握手を日本に向けている事実を見逃してはならない。


それは、日本から友好団体や経済団体が大挙して訪問する予定であった
中日国交正常化40周記念式典を公式に中止とする一方で、
密かに下記の関係者を記念レセプションに
(27日開催)招請していたことである。
このことは日本では大きく取り上げられていない。
取り上げられない方が先方には好都合である。


鳩山由紀夫元首相、田中真紀子元外相、日中友好会館会長江田五月
,日中友好協会会長加藤紘一日本国際貿易促進協会会長河野洋平
日中友好議員連盟会長高村正彦、全国旅行業協会会長二階俊博
日中協会会長野田毅、日中文化交流協会会長辻井喬(堤清二,実業家・小説家詩人)
日本経団連会長米倉弘昌
但し鳩山、二階は招待を断ったとあった。(以上敬称略)


これが右手で握手を求めるしたたかで千変万化の中国の実像なのである。
上記招待者は宴席の中央の席があてがわれ、先生!先生!と崇められ、
中日友好の連呼で乾杯、乾杯、『今後とも友情は忘れずに』と宴は盛り上がっただろう。


27日の日経紙はその模様を次のように書いている。(要約)


訪中団は27日午後、北京市内の人民大会堂共産党序列4位の賈慶林・全国政治協商会議主席と会談した。日本政府が尖閣諸島を国有化して以来、日本の国会議員が中国の指導部メンバーにあたる共産党政治局常務委員と会談するのは初めて。
会談の冒頭で賈慶林主席は「心から歓迎の意を申し上げる。日中両国は重要な隣国だ。皆様は両国関係の改善と発展に積極的な貢献をしている」と語った。



一方で中国関連の記事を追うと、日本制裁の報道に反論する動きも伝わってきている。
それは18日付の国内経済情報サイト・財新網は中南財経政法大学(武漢市)の
喬新生教授の投稿を掲載し、『制裁で日本経済が「20年後退」と
する人民日報の報道(17日付)を「アラビアンナイトの話(『あり得ない』ことの中国語表現)」である』と一蹴したとあった。


中国通の知人と、先日話したとき面白いことを聞いたのでそれを披露したい。



朱子学(孔子論語など)が学問の中心となった江戸時代から、
日本人は中国人をおしなべて『文人墨客の大人』ととらえているが
これは全く間違った解釈であり、中国人とは下記だと言う。


『オカネが大好きの民』(ほとんどの民は道教を敬う)
『嘘という概念がない民族』(嘘から王朝が創立された事実があるので嘘はない)
『弱い者は叩き服従させる人間』(4000年は覇権の争いであり覇者は弱者と叩く)
この基本的概念をシッカリ頭に叩き込んで付き合うことが必要である。


ということで、中国人の狡猾なまでの複眼的行動をもろもろの情報に
照らし書いてみた。