大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年

京都市美術館で開催中の「大エルミタージュ美術館展」を観てきた。



 
エルミタージュ美術館は、ロシアのサンクトペテルブルクに位置し、
ロマノフ王朝の歴代皇帝の宮殿からなる建物と、300万点を超える所蔵作品とが
見事な調和を織りなす、世界有数の美術館だそうである。
展覧会では同館の優れた所蔵品の中から、16世紀から20世紀における西洋美術の「顔」ともいうべき名作を、その世紀を象徴するキーワードに紹介している。



館内は日曜日ともあって混雑していたけれど、薄暗い館内では畳二畳分は
有にあろうかと思える大きなが絵が、立派な額縁とともに多数展示され圧倒された。
作品は全部で89点と多くはないが、1点1点が旧さとともに釘づけになった。
好きな作品ばかりだが特にダイナミックで心を捉えたものを少し紹介してみたい。


16世紀  ルネサンス;人間の世紀


ティツィアーノ・ヴェチェリオ
1570年頃 《祝福するキリスト》


16世紀ヴェネツィア絵画を代表する巨匠ティツィアーノの晩年の作で、
この人間味あふれるキリストの右手の仕草は祝福をあらわしている。
左手に支えられた球形のクリスタルガラスは、万物の支配者としての
キリストの象徴である。
16世紀初め、ティツィアーノヴェネツィア絵画の様式に革新をもたらしたという。


ロレンツォ・ロット
1529-1530年 《エジプト逃避途上の休息と聖ユスティナ》


ロレンツォ・ロットは、盛期ルネサンスヴェネツィア派の重要な画家で、
宗教画や肖像画を描くことを得意とした。
聖家族と聖ユスティナのまとう色鮮やかな衣服や身体描写には
演劇的なダイナミズムがみられる。
右下の女性の左胸に短剣がささっているのが痛々しい。



17世紀 バロック:黄金の世紀


ペーデル・バウルレーベンス
 1613年≪ローマの慈愛・キモンとペロ≫



キモン(父)は罪を犯し元老院によって 餓死の刑を宣告され投獄されていた 
この時 キモンの娘 ペロには乳児がいた
看守に見つからずに食物を持っていくことは不可能だったので
ペロは自分の乳を与え 父を救おうとしているシーンである


ソフォニスバ・アングィソーラ
《若い女性の肖像(横顔)》16世紀末

着ているゴージャスな服の質感に圧倒される。



18世紀 ロココと新古典派:革命の世紀


18世紀のヨーロッパでは、フランスを中心として「ロココ」とよばれる美術様式が流行しました。太陽王ルイ14世時代の壮麗なバロック様式が、ルイ15世と愛妾ポンパドゥール夫人のもとで繊細で優美な表現に変化したのです。一方、イギリス産業革命やアメリカ独立戦争、そしてフランス大革命がおこり、市民革命と近代化の波が怒涛のように押しよせたのもこの時代です。ロココ美術は、王侯貴族の雅な生活を彩る最後の輝きであったといえます。ーーー解説より



「マリア・アレクサンドロヴナ(ロシア皇后)の肖像画」 1857年制作
オーストリアのエリーザベト皇后肖像画、イギリスのビクトリア女王
の肖像画、ナポレオン3世のウジェニー王妃など錚々たる貴夫人の
肖像画が有名です。

















ジョシュア・レノルズ
1788年《ウェヌスの帯を解くクピド


レノルズはゲインズボロとともに18世紀のイギリスを代表する肖像画家で、
1768年創設のロイヤル・アカデミーの初代院長も務めた画壇の大立者として知られる。
本人は肖像画よりも歴史画に関心があったが、現在ではもっぱら肖像画家として
知られている。彼のモデルとなったのは男女を問わずほとんどが
著名人、名士、いわゆるセレブであったが、この絵でウェヌス
扮しているとされるのはエンマ・ハミルトンという平民の娘であった




 19世紀 ロマン派からポスト印象派まで:進化する世紀


芸術の都パリでは、画家たちが新たな表現を模索し、
さまざまな絵画様式がめまぐるしく展開されました。
19世紀前半にロマン派の画家ドラクロワは、
躍動的な構図と独自の色彩によって、感情をドラマティックに表現しました。




ピエール=オーギュスト・ルノワール
《黒い服を着た婦人》1876年 



印象派の画家として活躍し、「虹色のパレット」で女性の美を表現したルノワール
しかし本作品では珍しく、青や黒を白と対比させ、
それによって都会的な雰囲気が生まれている。
モデルが誰であるかは判明していない。








ポール・セザンヌ 《カーテンのある静物》
1894頃-1895年 


アンリ・マティス
1908年 《赤い部屋(赤のハーモニー)》

本展覧会の一番の目玉と言えるこの作品。
強烈な色彩にど迫力を感じる。


目を射る鮮烈な赤と、その上を這う青い植物文様。二つの色の鋭い対比が生み出す緊張感と躍動感を、画面中央を水平に横切る果物の黄色が和らげ支えている。絵画というものは色と形の組み合わせによって出来上がっている、という当たり前のことをこの作品は気づかせてくれる。そして、その組み合わせ方によって、どれほど強烈な表現が可能かということも教えてくれる。横2メートルを超えるこの大作の前に立つと、時が経つのを忘れる。エルミタージュの至宝であり、マティス(1869−1954)生涯の傑作である。
ーーーー解説より


クロード・モネ 《霧のウォータールー橋》
1903年 


うっすらとぼやけて見える絵・・
しかし、ず〜っと観ていると不思議と絵が浮かびあがってくる。


強烈に印象に残る絵画はたくさんあり、求めた画集で
2度おいしいグリコのキャラメルよろしく味わっているところである
ロシアという国にはさほどの関心もなかったけれど
この壮大な美術館には足を運びたいなあと心底思える。