時には自己主張を

 

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「もう、あかんわ・・・」

押し殺したような暗い声で娘が電話をしてきた。

「舐められてんのよ、わたし。あした、そっち行くわ・・・」

何があったのか、穏やかではない娘の言に驚いた。

 

幼稚園へ子どもたちを送って行ったあと、こちらに来ると

言っていたのに、朝10時を過ぎても現れない。

おかしいなぁ、携帯に電話してもつながらない。

めったに泣きごとなど言わない娘なのだ。

何んぞ思いつめて・・・?

良からぬ方向へと心配は尽きない。

 

午前のレッスンをしていると、ヒョコヒョコと彼らが

難民のような大荷物をひっさげてやってきた。

チビたちのリュックはパンパンに膨れ上がっている。

おもちゃや本やゲームなどどっさり詰め込み、

幼稚園も休ませたようなのだ。

大荷物ひとつ見ても、娘のこころ模様がわかるというものだ。

 

「ま、とにかく仕事が終わるまでお菓子でも食べて待ってて」と

部屋に入れると、対面のソファをL字型に模様替えしたリビングに、

すぐにチビたちふたりが反応している。

テレビの場所やおもちゃ置き場が変わっていることを

驚いたり喜んだりして騒いでいる。

 

そう言えば、こちらから彼らのところに行くことはあっても

最近「ご一行さま」がやってくることは少なくなっている。

「細かいところまでよく覚えているなぁ」

孫たちの記憶の確かさに、ばぁばは、変なところで感心する。

 

ようやくひと息ついて、彼女と話をした。

どうやら夫婦喧嘩をしたようなのだ。

双方がカッカとしているあいだは「売り言葉に買い言葉」で

つい、要らぬことを言ったりするのはよくあることだ。

しかし今回は夫の暴言と思える言葉に娘は、深く傷ついたらしい。

 

詳細を訊いてみると確かに彼女の言うことにも一理ある。

「そりゃぁ、いくらなんでもひどい!」

「言っていいことと悪いことがある!」

親バカなわたしは、同じようにカッカと熱くなり娘に同調してしまう。

 

わが娘、おしゃべりなクセして肝心なところで要領が悪い。

相手の迫力に圧倒されると、自分の言いたいことを言えず

黙って引いてしまうところがある。

いまどき、珍しく夫に対して自己主張をしないのだ。

そして気持ちを鬱積させる。

 

ケンカなど、たいがい些細なことの積み重ねである。

意思の疎通の欠落が大きい。

きちんとその場、その場で感じたことを、相手に言わないと伝わらない。

「黙っていてもわかる」ことはあり得ない。

いくら仲のいい夫婦であっても所詮他人(ちょっと冷たい言い方か)

晩年を迎えても100%理解しあえることは難しい。

だから会話が必要になる。

 

「はっきりとYES、NOを相手に伝えよ」

わたしは声を大にして言った。

たまには、自己主張も大切なときがある。

特に人格を否定されたように感じることほど辛く、悲しいことはない。

「こういうことは、受け入れOKだけど、それは受け容れられない。」

自分の気持ちを相手にわかるように「NO!」と伝える必要がある。

 

そして、どっさり積み重なってからの解決は大変だ。

「小出しにして、母に言いいなさい」と甘い母は、変なところで怒る。

「心配かけたくない」というがストレスをため過ぎて

ビョーキにでもなられたら、そっちのほうがよほど心配だ。

「親をもっと上手に使えよ。大した役には立たないが

あんたより早く生まれて腐るほど体験はあるのだから・・・」威張って言う。

 

ま、いろいろムスメの肩を持ったが結論から言うと

完全なるコミュケ不足である。

小さい子を3人抱え、ママは子育てに忙しい。

婿どのはサミシイのだ、かまって欲しいのだ。

そのあたりに起因しているのがよくわかる。

 

結婚して出産のとき以外、初めて実家に泊った娘。

かなり気分転換になったようである。

すっきりして帰って行った。

膨大な嵐の山のように部屋を散らかして・・・。

 

はっきり、自分の思いを伝えることは大切だ。

しかしそうするには、小さな演出も必要である。

夫が帰宅したらニコニコと笑顔で接し、お風呂あがりでも

薄化粧などして、妖艶な妻を演じるのだ。

そうすることで会話は一段と弾むこと間違いなし。

 

かくして翌朝、娘から明るい声で電話があった。

「仲直りしたからぁ~心配かけてごめん!」

やれやれ、夫婦ケンカなど犬も食わぬ。

とっととたくさんやっておくれ。

そうすることで夫婦の新密度も増すというものだ。

しかし意思表示は、きっちりするように!