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娘の憂い

家族

 

 

結婚している娘は、わが家から車で10分ほどの距離に住まいしている。

スープが少し覚める距離であるが、べったりしない親子にはちょうどいい。

娘宅へ、毎土曜日の夕方から「子守」に出かけることになった。

 

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夜の7時に始まるバレーボールの練習に、娘が出かけるためである。

小さい3人の子を引き連れてひとりでの外出など、ままならない。

自分の時間など取れない子育て真っ最中の彼女には

スポーツは、息抜きになるはずである。

 

「どーしてヨルに、れんしゅうがあるの?」

4歳のかえでが素朴な質問をする。

なるほど、どうして昼間にしないのか?という疑問もうなずける。

小さいけれどなかなか鋭いところを突く。

 

いまどき平日の昼間はママたちもパートで忙しく、人が集まりにくいのだろう。

夜であれば子どもを家人に預けて、外出できる。

 

娘宅は、婿どのの仕事が夜にかかるため夫に頼れない。

それでこちらに子守のハチが廻って来た。

 

「すっごいストレス発散になるわぁ~楽しい!」

一度見学に出かけた彼女は心底うれしそうである。

専業主婦の娘に風穴は、必要だ。

わたしはもろ手を挙げて賛成した。

 

昨日も娘たち一行が車で、わが家まで迎えに来てくれたのだが

車中、小学校に入ったばかりの潤平と4歳のかえでがケンカを

しているのをとがめる時の、娘の口調が粗っぽい。

 

「あれ~何だかご機嫌が悪そうだなぁ」

思いつつ彼女の家へ着くと、家の中はえらい散らかりようだ。

午前中に4歳の「園庭参観」に家族総出で、出かけて帰ると全員で昼寝をした。

だから片づける暇もなく・・というようである。

確かに運動会や屋外での参観は目も、からだも疲れる。

 

でも何だか、そればかりでもないようである。

何となく表情が険しいので夫婦喧嘩でもしたのかと

洗濯ものをたたみながら、それとなく話しを向けると

「ちょっと鬱になりそうなほど落ち込んでいる」というではないか。

 

いつも明るく活発そうに見える娘がどうしたことか・・・。

 

直近の一番の憂いは、マンションの役が当たってしまい

その会議などの出席を夫から押し付けられた・・ということらしい。

日曜日などの会議には、夜仕事がある婿どのは確かに、出席できにくい。

しかし会議は午前中にあるのに・・・と、不満気である。

当然のように押し付けられたのがイヤなのだという。

 

なるほど・・・

 

そして、ひとつのことに不満が出てくると、関係ないことまで

マイナスに捉え、苦の原因を広げてしまうのも未熟な人間の常である。

 

娘いわく。

「育児や家事ばかりで、働いていないと達成感が得られないのよね」

達成感などという言葉を娘の口から聞いたのは初めてだ。

これまで「働く」という意識は、育児真っ最中の彼女にはなかった。

「毎日、子どもが可愛くて、ゆっくり面倒をみておれる環境に感謝だわ~」

と、つい最近まで喜んでいたのに。

 

一昨年だったかに、夫の収入がぐっと減り、

やりくりに苦心していることは知っていた。

よくやっているなぁと内心、感心もしていた。

 

一番下の赤ん坊が歩きだし、上ふたりに遊んでもらうなど

すると、育児に余裕が出てきてそんな思いがよぎるのか。

働いて少しでも収入を得たいという思いが出てきたようである。

周囲のママ友も短い時間を割いて働くひとが増えてきて

少し羨望もあるようだ。

 

しかし、現実的には夫の仕事の性質上、自分自身にも大きな負担が

かかることは目に見えているし、自信もない。

さりとて収入増も図りたい・・・悶々としている。

 

確かに育児や家事労働は、なかなか評価はしてもらえない。

日々同じことの繰り返しのようで

達成感は得られないと感じるのも無理はない。

 

「だれも評価してくれなくてもお母さんがちゃんと評価しているよ」

「きちんと料理もして、子育ても一生懸命やっている。子どもたちは

伸び伸びと、ええ子に育ってるやんか!」とワタシ。

 

子育ては一大事業である。

人間形成の基礎をなす大事な時期に母親が

丁寧に子に向き合い、育てているというのは尊いことだと

娘にいつも言い聞かせていることなのに

忘れてしまっているようである。

 

小さい子を預けて集団生活になじませ

収入を得る生活も捨てがたいかも知れないけれど

子にとって母親はひとりである。

だからせいいっぱい小さいうちは、余裕を持って

育児に専念できることはしあわせなこと・・・

 

今の置かれた環境のなかで少しずつ自分の時間をみつけ

本を読んだり、好きな洋裁や手芸にいそしんだりして

今しかできないことを愉しんでみてはどうか・・・

そして来るべき再就職に備えてなにか資格を取るなどの

勉強をしてもいいのではないか。

 

給料が少なくても、夫が一生懸命働いてくれている。

子育てで忙しくてもチャンスと捉えて

感謝して今を享受したらどうか・・・

 

「日々の生活のなかに「ないものねだり」をするのではなく

「良かった探し」をしたらどうか。わたしもそうやって、生きて来たよ。」

母親は、熱弁を奮う。

 

「聴いてもらって少しすっきりしたワ」

「だれかに認めて欲しかったのよね」

少し気持ちが晴れたようである。

 

生きていると悩みや迷いは尽きない。

いま何が大事で必要なのか、よく見極めて行動したらいい。

 

偉そうに言う、わたしも60歳を越してようやく

自信を持って言えるようになった。

 

娘よ。

風穴を開ける手伝いなら、いくらでも協力するよ。

元気で憂いなく、今は家族を大事に子育てにいそしんで欲しい、と

母は心から願う