しあわせな猫

 

 

「毎日、暗くなるまで外で遊んで、帰ってきたら、ささっ~と

ご飯を食べ、すぐに眠りますわ~」   

 

人間の子どもの話しではなく、猫のことである。

知人のところにやってきた、捨て猫の生まれたて猫は、

今や住人のように安心してふんぞり返っているらしい。

 

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知人の近くに住む小学生の孫が「しっかり面倒見るから」と

連れてきた猫なのだが、言葉どおりの面倒を見ていたのは

最初の数日だけで、あとは知らんぶりである。

 

結局、不承不承でも猫を飼うことを許可した知人に猫の世話が廻って来た。

知人のところにはつい最近まで、外で犬を飼っていて

血統書つきの猫もいた。    

 

両方ともよく躾られており、ずいぶん可愛がっていたようだ。

 

先に犬が老衰で死ぬと、いつのまにか

同じように愛猫もいなくなり、一度に寂しさが

増していたところだった。

 

それでも、もうペットは飼わない!と決めている時に

孫が猫を連れて来たのだ。

猫は真っ白い毛に覆われているところから「シロ」と名付けられた。

上品な顔だちをしているらしい。

 

動物がさほど、好きでもなく嫌いでもない

知人は、いろいろ文句を言いながらでも

猫のトイレの砂やペット食を買いに出たり

まんざらでもなさそうである。

 

しかし、この捨て猫・・・

飼ってみると相当のやんちゃらしく

しょっぱなから和室の障子を破ったり

畳をガリガリやったりと、知人の怒りの収まらない日はない。

 

トイレの躾もできていない。

失敗したときには、思いっきり叩いたりして

こらしめたということで、聞いているこちらが

猫に同情するほどだった。

動物愛護にひっかかってはいけないので、小さな声で話すが、実は

「そこまでやるかぁ?」と驚くほどの洗治療をやっていたのだ。

 

 

おまけに朝方、夜など子猫だからか、もう泣く、泣く・・・。

 

粗相をしたときは怖い知人だが根っからのお人よしだ。

睡眠不足になりながら、根気よく面倒をみていた。

 

お腹が大きくならないように避妊手術をさせ

もちろん予防接種も受けさせた。

 

去勢したせいかどうか、シロはすっかりおとなしくなり

だんだん、家人の手を煩わせることも減って来た。

 

シロが知人の所に来て、半年だ。

「猫ちゃんは、どうしています?」

話を向けると、冒頭の返事が返ってきた。

 

毎日、庭で虫を取ったり、蝶を追いかけたり

最近は高い庭の木に登り、遊んでいるらしい。

伸び伸びと遊んでますよ、といかにも可愛いように

話す知人の目がやさしい。

 

リビングやキッチンなどで知人が用事をしていると

ジィ~っと傍に来て足元で待っている。

「わたしを親と思っているのじゃない?」と満足気だ。

 

孫も学校から帰ると毎日やってきて

シロと遊び、面倒を見るようになりました。

何より子どもの情操に良いしね、と目を細める。

 

「暗くなるまでたっぷり遊び、帰ってきたらコトンと寝る

何の悩みもない猫が、まったく羨ましいですよ、

しあわせな猫ですよ~アハハハ」心底、シロが愛おしげである。

 

良かったね、シロ。

他人事ながらどうなることかと

こちらも気を揉んだが安心した。