アマガエル君は・・・

 

 

先日ひと足早い墓参をしてきた。

岡山まで車で行くと高速の普及で、片道2時間ほどで行ける。

しかし他の交通手段だと一日がかりになる。

娘婿が忙しい合間をぬってつきあってくれ、ありがたいこと

このうえない。

 

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わが息子と来たらこの時期、翌月に控えた「だんじり祭り」の

準備で休日は埋まっている。

 

今年を最後に花型であるらしい、だんじりの上でぴょんぴょん

飛び跳ねるあの大変な役は引くというから安心している。

毎年事故があったりして、終わるまで気が抜けない。

まったく親不幸息子である。

 

愚息にとっての晴れ舞台を無事終えることが当面の課題なのだろう。

お金も根性もエネルギーも人一倍要る。

嫁さんも、親のわたしも、禁煙を願うのと同じぐらい

だんじり祭りからの卒業を願っていた。

今年で引退するらしいから、やれやれである。

 

話が逸れたけれどこの時期、そんなわけで墓参は行きたいと

思ってもなかなか行けないでいた。

 

わが家の墓地は、小高い山の中腹にあり

その一帯はほとんど同じ名字の墓ばかりである。

どの家も似たような敷地に墓碑がたっており

わが墓地が入口に近い通り道になっているから、草など生えていると

目立ってしまい、みっともない。

特にお盆や彼岸など都会からの帰省で墓参は必須の行事だ。

特にお墓をきれいに磨いておきたい。

 

3人の孫を引き連れ、暑い中草引きをする。

チビたちも軍手をして汗だくになって草をひいたり

墓を拭いたりしてくれる。

1歳のチビも一人前にスコップを持ち、おでこに

玉のような汗を光らせ、無心に草引きの真似をしている。

 

わが家の息子や娘が小さいころもこうして

大阪から車を走らせ、家族で墓の掃除をしたものである。

いまや、車を繰った本人がそこに眠り、掃除をする側の

人間が代変りしている。

 

いずれ、わたしもここに眠ることになるのだろうが

このように草引きなどに大きくなった孫たちが

来てくれるのだろうか・・・

遠い未来の話ではなく現実のこととしてふっと思いがよぎった。

 

「あっカエルがいる~~~」

7歳と4歳の孫が、きれいな緑色をした可愛いアマガエルを

みつけ、はしゃいでいる。

墓碑の切り込んだ文字のなかに、毎回姿を現すのである。

いつもこちらを見ているように感じる。

 

これまで気にかけたこともなかったが、毎回行くたびに

アマガエル君がじっとこちらを伺うように見ていることに

ひょっとして亡き夫が姿を変えて見ているのではないか・・と

最近、思うようになった。

 

モノ言わぬ霊界の住人は、ときどき身近な蝶などの動物にになって

人間界を見ている・・・などの話も聞く。

わが夫は、可愛らしいアマガエルに姿を変えて

墓参をしている孫たちをみて喜んでいるのではなかろうか。

「よう来たなぁ~~」

ニコニコとした笑顔が見えるようである。

3人の孫をだれ一人抱くこともなく旅立った夫は

人一倍子煩悩だったから、生きていればわたし以上に

目じりを下げ、チビたちと遊んでやったことだろう。

 

ワイワイがやがや・・蚊に刺されそうになりながら

30分ほどで掃除を終えるとどっさり抱えてきた

花を仕分けそれぞれの花たてに容れる。

 

好きだったお菓子やビールや果物も供え

かぐわしい線香を手向け、チビたちも小さい手を合わせる。

あの世のひととこの世の人間が時間を共有する

ひとときのように思え、心がなごむ。

 

3人の孫たちも、このような時間を忘れないで欲しいなぁと願う。

ありがとう。

大きくなって「皆で車で行ったなぁ」と思い出すことだろう。

遠い墓参は交通事情などの心配もあり毎回緊張する。

でもこのように時間をかけて一家総出で墓参をするのも悪くはない。

皆を見守っていてね、アマガエル君。

ひと足、いやふた足早く眠った夫に密かに頼む。