「風立ちぬ」雑感

 

 

今さらだけど、やはり書いてみたい。

宮崎駿監督の「風立ちぬ」は、封切り前から話題沸騰で

周知のとおりタバコの問題から、お隣韓国の感情論まで

賛否両論、物議を醸している。

このような物議がまた制作者の意図しないところでの

観客動員につながるのか・・・?

上々の興業であるらしい。

 

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画像はお借りしています。

 

 

ストーリーについては、いろいろな方が書き尽しているから省くけれど

一番感じたことは、アニメであっても「どの層」を対象に

作られたのかなぁということである。

 

宮崎駿作品は「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」など

子どもがワクワクする、ファンタジーで夢のあるものが多い。

大人も子ども見られて、わたしも大好きだ。

そしてDVDでも飴玉をころがすように、おいしく何度も愉しむ。

わが家のチビたちとも、飽きずに見ている。

 

今回は、小さな子どもがこの物語を理解できるのかなぁ??

たとえば、わが家の7歳の孫が見た場合、退屈するのではとも感じた。

 

飛行機が大好きな少年が大人になり「美しい」飛行機作りに

夢中になってゼロ戦を完成させる過程には、わくわく胸躍る。

しかし純粋な恋愛の心理描写や、映像に表出しにくい時代背景や

思想までは感じ取ることは、難しいかも知れない。

それでも日本のある時期、このようなことがあった!と

脳裏に残るだけでも成功なのかもしれない。

 

わたしは泣けた・・・

映像の一つひとつに釘づけになった。

 

なにしろ、絵が素晴らしい。

特に今回、色彩にこだわった、というだけあって

あの大きなスクリーンに映し出される真っ青な空と白い雲など

鮮明で観ているだけで、もう、うっとりである。

どうしたら、こんなにきれいでリアルな絵が描けるのだろうか。

たくさんのアニメーターの手を経て完成されたであろう

それぞれの場面がいとおしく、よけいなことながら

製作者の水面下でのご苦労も感じたりする。

 

借りぐらしのアリエッティ」の前作も色彩が鮮やかで

木々や花が丁寧に描かれ、見ているだけで

ワクワクしたけれど、それ以上のものを感じた。

 

アニメだけどリアル・・・

最近、パソコンで下手な絵を描き始めたわたしは

内容もさることながら、「絵」の美しさに圧倒された。

デジタルでの絵の表現に関心が深い。

 

暗雲立ち込める暗い雲の出現あたりから関東大震災の描写が続く。

当時の家々の瓦や、屋根や、道路が押し潰されていく様や

人が逃げ惑う様子が、音楽とともにリアルに胸に迫る。

圧巻である。

 

どこぞの委員会が、タバコを吸う場面は青少年に害を与えるから

よろしくない、と言っているそうだが、確かにそれも一理ある。

特に胸を病む妻が病床に伏している傍で、タバコを

呑むシーンは、大丈夫かなぁと心配する。

ちょっと行きすぎかなぁと思わないでもない。

 

しかし喫煙が問題になりだしたのはごく最近のことである。

当時の映画のシーンはアメリカ映画でも邦画でも

タバコをくゆらす映像は、たっぷりありそれが普通だった。

時代を映す小道具のようなものだから

今さらそのシーンだけを除外しても?と感じるのはわたしだけか。

 

映画は常に歴史を物語る。

 

主人公がゼロ戦を完成させたときに、最愛の妻菜穂子がこの世を去る。

見えない風がふたりのあいだに、サァ~と揺れているように感じた。

この瞬間に、熱いものがこみあげた・・

もう一度観たい映画である。