そして神戸

 

演歌の題名ではないが・・そして神戸である。

 

 このところ山に、縁がある。

登るのではなく、延々車で走り抜けるだけだが

8月のお盆過ぎあたりから草津、箱根、中央アルプス

渓谷やみどりをたっぷり堪能してきたのに・・・

今度は神戸だ。

 

 わが家から神戸までは車で1時間足らずの距離であり

六甲や麻耶山までは、クネクネと曲がりくねった緑のトンネルを

30分ほどくぐる。

遠くに連なる山々がうっすらと見え隠れ、どちらを向いても

沁みるような緑、少し色づいた木々が、爽快だ。

このあたりは、箱根の景観とよく似ている。

 

 

「奇跡のクラーク・コレクション ルノアールとフランス絵画の傑作」が

9月1日まで、兵庫県立美術館で開催されている。

これを見たさに、小さなツアーに参加した。

 

 

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何といっても集合場所が、わが家から歩いて数分の距離だ。

往路バスだからこの暑い時期に電車の乗り換えを

せずに済むというのが、ありがたい。

寝ていても黙って運んでくれる。

 

 

ルノワールとフランス絵画と麻耶山・神戸癒しの

オーベルジュ・黄昏の神戸港クルーズ」という

舌を噛みそうな長い表題のツアーだ。

 

中高年女性の食指をそそる、てんこ盛りの日帰り旅行が

格安で行けるとあってオバサマ族が圧倒的に多い。

もちろん、わたしめもそのひとりだ^^

 

 ほんわかと親しみのある車内でおしゃべりしたり

居眠りしているあいだに途中トイレ休憩をとっても

1時間ほどで神戸へ到着、そして山頂である。

さすがにてっぺんは、秋の気配が漂っている。

 

 リストランテ・エレベッタという小洒落たレストランで

焼き立てパンやパスタ料理のコースで昼食。

デザートが一番おいしかったかなぁ?

 

 

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 ロッジ風の静かなホテル

 

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テラスから神戸の街並みが眺望できる。

 

食事を終えると軽く周囲の山を散策していよいよメインの兵庫県立美術館へ・・

 

建築家安藤忠雄により前面の海に接するなぎさ公園と一体化して設計され

館内は通路が巡らされ、建物そのものを鑑賞の対象とするような

空間で構成されている。」

ということだが、なんのことはない。

 

暗くて、コンクリートの打ちっぱなしで、おまけに会場が3階にある

非常に不便な美術館である。

安藤忠雄の設計はモダンかも知れないが、使いにくいことで有名らしい。

 

 狭い小さなエレベータはなかなか来ないし、急な勾配の階段をゾロゾロ上がる。

息切れがしそうである。

まったく「利用者のことを考えてるの?」と、怒りにも似た思いが湧く。

 

 閉幕間近ということもあり、大変な混雑だった。

チケットをもぎられるまでの長蛇の列。

係員がひとりしかいない手際の悪さである。

 

 ツアーだから時間の制限がある。

待っている間にどんどん時間が過ぎて、焦る。

隣で開催している「マリーアントワネット」を見るどころではない。

美術館は、やはり個人でゆっくり来た方がいいかなぁ・・

 

 開催の内容は、こちらでどうぞ!

 

ルノアール以外の巨匠、マネやモネなどの作品も多数展示されており

案外じっくり観られた。

重厚な彫りの素晴らしい額縁にも見入ってしまう。

 

 ルノアールの絵はどれも圧巻で、見慣れた絵が多いなか

特に惹かれたのは、子どもや赤ちゃんを描いた優しい絵

[ベラール家の子供たち」(頭部の習作) 1875年である。


クラーク夫妻が、ルノワールと個人的に交流のあった人たちを

描いた作品を好んで収集したと言われている。

子供の群像としてみても魅力ある作品で、

習作とは思えない完成度の高さを感じた。

ふんわりとした口元、あるか無きかの薄いマユ、まるいほっぺ。

そして、プクプクとした手や足の感触。

生きる喜びが、感じられる。

 

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 帰りに画集を買おうと手に取ったが、また長蛇の列でごったがえしている。

並ぶのがイヤで買わなかった。

 

観覧が終わると、「神戸ハーバーランド」のモザイク広場で

クルージングまでの待ち時間、買い物や散策を、愉しんだ。

炎天下のなか海辺に腰を下ろすと潮風が頬に気持ち良く馴染む。

 

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震災からりっぱに復興を成し遂げた神戸は、街並みが整備され

多少無機質な感があるけれど、異国情緒も残していて好きだ。

特にかつてのメリケン波止場と称された界隈の雰囲気がいい。

丸い形をした「オリエンタルホテル」と波止場は、神戸に

ふさわしいおしゃれな処である。

 

 

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観覧車とモザイク広場

新しく「umie」だったか、立派な商業施設が建ち

家族連れで賑わっている。

 

夕方から、内海を軽く40分ほどクルージングして廻る。

大手の造船会社の船がドック入りしていて重油の臭いを

嗅ぐと北陸の「舞鶴港」を思い出した。

 

夕闇が迫るなかでの船上というのは、何とも寂しさがつきまとう。

窓外に流れるポートアイランドや大学の建物、

そして夕陽に映る波をじっとみつめていた。

 

 

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この船に乗りました。

 

バタバタと慌ただしいツアーであったけれど、けっこう愉しめた。

混んでいた「ルノアール展」だが、一番こころに残る。

ゆっくり反芻しているところだが画集を買わなかったことに少し悔いが残る。