Iさんは、イタリアの各地、スイスのあらゆる町を
パート勤めをしながら旅行を愉しんで来た。
「今ならとてもじゃないけれど行けないわ」
退職したいま当時を懐かしみ、しみじみ言う。
数十年も前に訪れた海外の写真は今のようにデジタルでもなく
きれいな風景や人物を、およそ「構図」などとは無縁に写真を撮って来た。
「もう少しマシな写真を撮っていれば良かった」そう言いながら
その写真をもとにパソコンで絵を描き始めて、3年になる。
「絵心はありません」誰もが口をそろえたように言う。
絵に対する基礎ができていなくても
専門分野で学んだわけでもなく、知識は皆無であっても
無心に描くことを愉しめる「いま」を有り難く思う、とIさん。
アナログの写真をパソコンに取り込み、トレースし、彩色し
旅の思い出をⅠ枚の絵として蘇らせる。
上手下手ではなく、そこには確実にそのひとの生きた
軌跡があり、愛着もひとしおである、ということが感じられる。
「こんな楽しいことができるようになるなんて
思ってもみませんでした・・・」
少しずつ、躓きながら、悩みながら、自らを
成長させていったIさん。
「継続は力」を強く感じている。
作品展出品作、他数点