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血は水より濃いか? 映画「そして父になる」

 

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 画像はお借りしています。

 

大切に育てて来た我が子が他人の子どもだと

突然知らされたら、あなたはどうするだろうか。

6年間大事に慈しんで育てて来たわが子を

血のつながった両親に戻せるのだろうか。

 

ご存じ、福山雅治 主演の話題作「そして父になる」を見てきた。

沖縄在住の40年前に起きた実話に基づいた話であるという。

監督自身はオリジナルだと言い、原作者との物議を醸しているようだが

そのあたりは、ここでは関知しない。

 

ふたつの家族が、病院で子どもを取り替えられたことにより

判明してから病院側の意図で、早急に子どもを交換することを提案される。

 

赤ちゃんが生まれて6年の歳月は、長くて濃い。

親子の絆が一番育つ時期でもある。

血液判定で親子でないことが立証されたから

「はい、わかりました」と言えるものでもなく

「申し訳ありませんでした」と謝られて済む問題でも、もちろんない。

 

子どもひとりの人生のみならず親と子、夫婦間、子どもの兄弟、

親戚など様々な関係が絡んでくる。

これまで普通に営んで来た親と子が、夫婦が、微妙に

ぎくしゃくし始め、葛藤と苦悩のどん底に突き落とされる。

 

何より子どもが居場所のない寂しさを味わい大きな犠牲を払うことになる。

簡単に、子どもではないから「交換」しますと言えないのは当たり前だ。

 

福山演じるエリートサラリーマンの父親と、あまり自己を主張しない

母親との間に生まれた子ども、慶太。

取り違えられた相手の子どもは3人兄弟の一番上で稜星という名だ。

奮わない自営業の父親と、はっきりモノを言う母との間で

貧しくも愛をいっぱい受けて育っている。

 

エリート夫婦と、金銭に対して現実的な夫婦は対極にある。

慶太と綾星は、お互いの家を行き来ししながら、血のつながった

親のもとで暮らすことを余儀なくされる。

 

今の時代、病院の管理も整い、携帯などですぐに写真を撮り、

病院側も足型などを含め母と子の写真も、サービスされるから

このような問題は起きないだろうにしても、残酷のひと言に尽きる。

 

わが娘家族が、自営業で3人の子どもを育てており、

福山家と対比する家族に年齢構成も似ていることから、

娘家族と置き換えて映画を見た。

7歳、4歳、1歳の兄弟間のきずなも大きい。

幼い妹や弟が新しい血のつながった「おにいちゃん」をどう受け止めるのか。

映画のなかでは屈託なく遊ぶ兄弟が映し出されていたが実際はどうだろう。

 

わがやの孫たちは、ペットのうさぎも家族に数えられ結束が固い。

だから必ず、訊くだろう。

「ジュンくんは?どうしていないの?」など・・・。

 

現実的に捉え胸を痛め、涙が止まらなかった。

 

昨今、親による子殺しや虐待があとを絶たないなかで

一人の子どもを巡り、お互いの夫婦や家族が真剣に子を思い

悩み、苦しみ、そして慈しむ姿など胸に迫る。

 

それぞれの子どもが、血のつながった親の所に戻されるシーンなど

育ててくれた親を信じきっている子には納得がいかなくて当り前だ。

反抗したり、ひとりで電車に乗り育ての親の所に帰ってきたりする。

 

映画は丁寧に親と子の心情や、子のあどけない疑問などを映しだし、

BGMのやさしいピアノ曲が一層の切なさを醸しだしている。

 

この事件をきっかけに福山父は、少しずつ父性を取り戻していく。

そして父になっていくのだ。

 

血は水より濃いのか。

果たして、それまでの絆が優先するのか。

結論の出ない遭遇に、胸をえぐられる思いの映画だった。