林真理子の著書に「不機嫌な果実」というのがある。
なかなかおもしろい小説だが、こちらはそんな高尚な
ものではなく、単なる第一声の応対のまずさのことだ。
固定電話への電話は、最近少なくなっている。
知人・友人、子どもたちとは、たいていが携帯電話でのやりとりで済む。
その携帯でさえ、カバンのなかに置き忘れ、電源切れ寸前に
気が付き、着信記録をみては、あわててかけ直すなどしていている不精者だ。
携帯につながらなければ固定電話に、という具合だから
よほどのことがない限り、固定電話は「無用の長物」の存在である。
そんな飾り物の電話にも時どき、出番がある。
電話が鳴ると、広くも無い部屋で子機を取ろうとするが
「待てよ」と一旦、本体のディスプレイでナンバーを確認する。
「ヒツウチ?」・・・ふむ、出ない。
「0120~~」・・・どうせ勧誘か何かだろう、出ませ~ん。
「06~」・・・大阪市内の知人からか、迷う。
「072~~」・・・ムムム。正真正銘の知人か??
まったく電話ひとつに悩むのは、ここ数年の退職後からである。
それまで留守電にしていて、昼間に電話に出ることなどなかった
わたしも、居留守を使うのも気が引けて「まとも」に出ていたのだ。
ところが昨今の電話といったら、厚かましいこと、このうえない!
化粧品や投機話は言うに及ばず、やれ統計だ、アンケートだのと、猥雑だ。
受話器を取った瞬間に、テープから人工的な声が流れたりするのも
腹立だしい。
こちらも作業を中断しての行動だから、テープなんか流すな!と怒鳴りたくなる。
「オレオレ詐欺」などの電話は、かかってこないだけマシか・・・。
かかってきたら、ひと芝居打ってやろう!と
手ぐすね引いているが、今のところ、その手の電話はない。
そうした固定電話への不信感が募る一方のところへ
たまに普通の電話が入ることもある。
それでも、「モシモシ・・・」
こちらは、名を名乗ることもせず見覚えのないナンバーには
最大の不機嫌さを込めてダミィ声で応対する。
相手が知人だと認識した途端、360度ガラリと声音を変える。
「ひゃぁ~~○○さん?失礼しましたぁ」と詫びたりして、忙しい。
作品展の礼状を電話番号明記で出したことからお礼の電話を丁寧にいただき、
再三、頭を下げているのが、最近のわたしだ。
まったく、固定電話への不審感を、どうにかせねば・・・。
二重人格のような演出も困りものである。
いやいや、元々そうかも知れないが・・(--〆)