親ごころ

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ずいぶん初期の作品だ。

 

幾つになっても、親は子どものことが気にかかる。

子が成人して、親になっても、だ。

 

 無沙汰をしている娘の処に行こうと思い、途中で電話を入れた。

チビたちの好きな焼きたてパンをみやげに持っていこうと思ったからだ。

留守にしていたら無駄になるし、持ち帰ってもそんなに食べられない。

 

午後3時を回っていた。

娘のスマホに何度、電話してもプチっと切れる。

固定電話にかけてみる。

出ない。

おかしいなぁ。

「いったいどうしたんやろう?」

通じないとなると、よけいに気にかかる。

とりあえず、そのまま娘のところに行くのを断念し、わが家に戻った。

 

 夜になっても何の沙汰もない。

普通なら携帯などに着信が残るので折り返し電話がある。

何もないところを見ると、よほどのことがあったのだろう。

だんだん、よからぬことを考えてしまう。

いま物騒な世の中だ。

何が起きるか予測できない。

もしや救急搬送されたのでは?

チビたちはどうしている?

 

 こんなに気を揉むのは、つい先日まで娘が高熱を出し寝込んでいたからである。

医者には看てもらったらしいが、何しろチビたち3人がいる。

おちおち寝てもおれないので、いっこうに風邪は良くならない。

 

 さいわい、幼稚園の送迎、家事などは婿殿がやってくれている。

婿殿は飲食業を営んでいて夕方からの仕事だ。

心配して、看護師をしている義理の妹が点滴を携えてやってきたり

近くに住む義母がよく効くと言う漢方薬を持って手伝いに来てくれたりと

たいそう、婿の実家の人たちには世話になっていたようである。

 

 わたしは、と言えばクチを出すだけで、孫をみるのが関の山だが

その肉体労働も、最近はボツになっていた。

 

 娘があれほど熱心に打ち込んでいたバレーボールを辞めてしまったからだ。

昨年の秋ごろから練習に執着し、忙しくも緊張感ある日を送っていた彼女も

年が変わり、いよいよ初の試合に臨む!というときに

チームのなかのゴタゴタに巻き込まれ、新人が一斉に辞める挙に出た。

もちろん自分も新人だ。

夜中近くにまで及んだ「会議」のようなことのあと

一度に心労とストレスが吹き出し、今回の大風邪につながったと

本人は言っている。

 

 「子どもが小さいから、ほどほどに・・・」と思っていると、案の定である。

孫守も最初の週一から、週2になり、週に3回のときもあり

わたしも実は、根を挙げそうになっていた矢先のことだ。

「やれやれ・・・」内心、この「肉体労働」から解放されホッとしている。

反面、少し寂しくもある。

ほどほどにチビたちとは遊んでいたい。

 

 そうしたことから久しぶりに、娘のところの陣中見舞いを

と思い、出かけたのが昨日のことである。

 

 夜になってもなんの沙汰もないから、いよいよ婿殿に電話をした。

仕事中の彼に電話など迷惑先般だろうが、やはり心配が先に立つ。

電話に出た婿は、明るい声で

「お義母さん、いま皆で出先です~」と言うではないか。

「え?仕事は?」と訊くが早いか、

「今日は休みです、明日と振り替えました~」

「彼女の電話は充電切れです~すみませ~ん」

 

ま、生きていることが確認できれば、いいか・・・。

 

遅くになって娘から電話があった。

「病みあがりやのに外出して大丈夫やったん?」

 

親はいつまでも、大人になった子どものことを案じてしまう。

同じような思いを、わたしも郷里の母にさせていたのだろうなぁ。

ささいなことが気にかかる年齢になった。

歳のせいだろうか。