持てる者の苦悩

 

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 絵はシュノン城・・・額に入れたので再登場^^

 

昼食時に見るともなしにつけているテレビから、悲壮な言葉が流れている。

「兄に裏切られたのです」

「こんなことは、したくなかったのですが・・・」

顔を隠した女性が音声を変えてインタビューに応えている。

彼女の父亡きあと、遺産相続で裁判に持ち込んだようなのだ。

実の兄と妹が金銭を巡って争うことは昔から、あった。

珍しくはない。

 

しかし最近、このようなことを身近でも聞くようになった。

 

長いつきあいの知人女性H子も、2年ほど前に相次いで両親を亡くした。

その哀しみの癒えないうちに、あろうことか兄に裏切られた、と肩を落とす。

まったく晴天の霹靂で、ショックも大きい。

 

彼女の両親が遺した遺産は、彼女が現在住んでいる土地と家

そして預貯金(億単位らしい・・・)

その預貯金を兄がいつのまにか名義を書き換え

自分のものにした・・というのである。

 

認知症を患った高齢の両親は、最期の6年間を兄夫婦のもとで暮らし、

兄嫁が献身的に介護にあたってくれ、感謝しているといつも言っていた。

当然、その労に報いたいし、そのつもりでいた。

ところが・・・この結果だ。

たった一人しかいない兄の仕業に心底打ちのめされた。

 

土地と家だけでもJR沿線の、快速が止まらない駅とは言え

数分の所に300坪ほどはある敷地だ。

そのなかに母屋、離れなど3軒の家が建ち、

旧いけれど立派な門構えと見事な松が植わった庭があり

まるで料亭なみの風情の家である。

 

その家に以前は、両親と住み、両親が兄の所に行ったあと

夫、未婚の息子がそれぞれ別に住んでいた。

 

なのに最近、ひとりで住むようになった、と言う。

 

こんな広い屋敷にどうして?

それに物騒だなぁと思っていると

「去年の秋に離婚したのよ」と、さりげなく言うではないか。

「どうせ、夫には生活費などもらってなかったし・・・」

「その夫にも、信頼していた兄以上に裏切られ、ボロボロよ」

夫は肝心のときに何の支えにもなってくれないし

頼りにならないの、と、けんもほろろだ。

息子は夫の事業に加担し、一緒に住むべく同じように引っ越して

行ったという。

 

幸い、彼女には駅近に所有しているビルが有り

家賃収入などが入ってくるから生活には困らない。

 

親子、夫婦、兄弟姉妹・・・

お金があることで揉めること

無いことで、いがみ合う。

金銭を巡るトラブルは多い。

特に最近は、財を成した両親の遺産を巡っての

団塊世代間の争いが目につく。

 

片方の意見だけでは当事者が、被害者のようにも感じるが

物事にはつねに表裏一体、見えない側面がある。

何がトラブルの原因になっているのか。

腹を割って話し合い、納得する形に終息できないものかと

持たざる者のわたしは、呑気に思う。

当事者にとっては大きなストレスだろう。

 

 持てる者の苦悩も深いが、それ以上に夫との別離、

子どもとの心情的な疎通の欠如は、心に痛い。

H子の一日も早いこころの平安を願う。