子どもたちのそれぞれ

f:id:mursakisikibu:20140325102658j:plain

 

桜の季節になると、夫が感慨深げに言ったものだ。

「もうすぐ結婚○○年やなぁ、ようここまでもったなぁ・・・」

結婚生活の大半を闘病していた夫とは、いろいろそれなりにあったが

切れもせず、持った。

結婚式を挙げたのは4月中旬だったから、今年は何年目に

当たるだろうか・・と思うが、もう数えないことにしている。

それでもふと、亡き夫の言葉が耳に届く。

 

夫は、子どもたちの結婚を知らずに逝った。

もちろん可愛いチビたちの顔も見ていない。

生きていたら・・と思うこともあるが、それも考えないことにした。

辛くなる。

 

わが家のこどもたちは、それぞれ所帯を持っている。

 

娘家族とはしょっちゅう行き来するが息子夫婦とは

近い距離であっても、そんなに頻繁には会わない。

 

息子や娘の結婚に関しては、常々

「身の丈に合った結婚式を挙げてよ。親は一切援助できないから」と

言い聞かせていたせいもあって、あっけないほど滞りなく

そして心に残る式を、二人ともやってのけた。

 

結婚式につきものの、双方の親の意見の相違もなく。

もっとも親は黙ってみているだけだったが。

 

娘はハワイのオワフ島で式を挙げた。

場所が場所だけに、身近な縁者だけが出席する簡素な式になった。

しかし双方の親の旅費一切を、娘夫婦が持つなど太っ腹である。

 

海辺の教会に向かうリムジンの乗り心地の良かったこと!

マフィアが乗るような長い車に初めて乗った。

黒ではなく真っ白だったのは意外だったが

お上りさんの如くワイワイキョロキョロ見回しながら

皆で式場へ向かったのも懐かしい。

真っ青な空と、蒼い海と白い雲、ゴシック建築のおしゃれな教会は

絵に描いたような素敵な風景である。

明るく、さわやかな風が吹き抜け、南国特有の潮の匂いがした。

 

わたしは夫の写真を胸に、厳かな式に臨んだ。

ちらりと、亡き夫の喜ぶさまが見えたような気がし

切ない、何とも言えない気分になり、ウルウルと目を赤く腫らした。

それでも「娘を嫁にやる・・・」などのしんみりした感慨よりも

ハワイ旅行の気分が勝ったような、妙な式だった。

 

ウエディング姿に身を包んだ娘のメーキャップにも驚いた!

これが娘か!と見まがうほどウツクシかったのである。

丹念に時間をかけてメークしてくれた日本人女性の

メークの技術にヘンなところで感心したものである。

 

式や披露宴のあと、姉とふたりで迷子になりそうなほど歩き廻った。

堂々と日本語で交渉しながら、島巡りや買いものも愉しんだ。

他の親族は、飽きるほど泳ぎを満喫したようで

帰国の際には、皆こんがり焼けていた。

昨日のことのように思い出すけれど、8年も経っている。

 

息子の方は、娘より1年遅れで片づいた^^

慶びごとって続くものである。

 

同じく教会での式だったが、娘のときより何故か

ウルウル度が高く、ハンカチを何枚もグシャグシャにした。

「この子には長男として我慢させることが多かった・・・」

「父親の名代として、よくここまで育ってくれたなぁ・・」との

思いが強かったせいだろうか。

式のあいだ中、花婿のママは、泣き明かしたのである。

 

傍らで1歳の潤平がおとなしくミニカーで遊んでいたのが

目に焼き付いている。

このやんちゃ坊主も、来学期から小学2年生だ。

 

映画の寅さんのように、人情厚いローカルな彼の披露宴は

息子が大事にしている「祭り関係」のひとの臨席も多く

想像通り、涙あり笑いありの土臭いものとなった^^

 

お嫁さんを娶ったおかげで(いまどき娶るなんて言わないか・・)息子は変った。

珈琲嫌いがいつのまにか、珈琲を欠かせないほどになっており

何より家計管理をきちんとしてくれる彼女のおかげで浪費癖も収まっている。

 

ふた組の夫婦の結婚のころを久しぶりに思いだした。

スープの冷める距離に、つつがなく暮らしている。