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『よくできました』と、社会的貢献の意味

 

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小学校低学年のころ、桜の花びらに『よくできました』と、書かれた

先生の朱スタンプを押されたことは、とてもうれしかった。

憧れであり、嬉しい評価でもある。

これを懐かしむ人も多い。

 

この数年の日本政府(特に安倍首相)は、労働人口の減少を補うために

女性の社会進出を促し、更に多くの女性活用(登用)を進めている。

こうした女性の社会進出は、実は40年以前から日本で大々的に

実行されていたことを、ご存知のひとも多いだろう。

 

その社会とは、日本の義務教育(小学校と中学校)の教員の社会である。

不朽の名作「二十四の瞳」で高峰秀子演ずる大石先生は魅力的な女性教師だ。

(戦争中は多数の男子教員が召集され女性が代わって就いたと聞いた)

もっとも平時にも昭和になってからは、女子師範学校出の教員が居たと読んだ。

その教員職は地方公務員であり待遇は、一般地方公務員と同じで性差による違いはない。

そのうえ、今太閤と呼ばれた田中角栄首相が、教育の重要性を慮り

給与水準を地方公務員より多くしたのだ。

このため女性が教員職を求めて殺到し、男性教員が隅に追いやられる

という現象が、あったと聞く。

 

優秀な多くの女性が教員職に就くことは、国としても歓迎すべきことだ。

しかし女である私個人としては、その過剰増加に一抹の懸念を懐いていたことがあった。

そして、その懸念は現実になってしまったと認識している。

それは極端にいうと、草食男子を造り、ボランティアに励む男衆を生んでしまったことだ。

ボランティアは決して悪いことではない。

むしろ、褒められることでもある。

 

女は優しく平和が大好きで、単純に戦いは野蛮と思っている。

(ボクシングやプロレスに熱狂する女性がいるのも承知しているが、それはあくまでも少数派)

そうした平和を愛する教員に育てられた生徒は、いわばメドキ(女時)の人間になってしまう。

 

確か、向田邦子の小説にも「 男時・女時おどき めどき」というのがあったような・・・?

大東亜戦争下の日本は、その真反対のオドキ(男時)の時代であり、

当時は、女生徒までも竹槍で藁人形を突く訓練をしたと親から聞き、

ドラマなどでもそう教えている。

時代とは恐ろしい。

 

メドキは、闘とチャレンジを避ける社会を形成し、連帯や絆を尊ぶ世界を夢見る。

それが今日の多勢のボランティアを生むきっかけになったのではないか。

そこには『よくできました』の朱スタンプを求める良い子(善人)の大人達が

集まっているように思える。

 

このボランティアには、大学生には単位を付す大学もあり、また手当の受給などの

実利もあって、米国のキリスト教会が起源の20世紀型ボランティアの

精神(神への奉仕)とは、日本では次元が異なっているようだ。

 

人は社会の一員として自立して生計を維持し、家庭を営まければ一人前とは言えない。

このため学業が終われば、競って職に就き親から独立をするのが、

かつての社会通念であった。

女の私も当然その考えに沿って生きてきた。

しかしこの世の中でいつ頃からか、その通念が変わってきていることに、最近気づいた。

 

先日、何気なくNHKの「クローズアップ・現代」で

『今日の就職状況』を趣旨とする番組を、数分間見た。

静岡バス会社が採用した25歳前後の青年をバスの運転士として育成

することを紹介しており、走行訓練を経て初出勤日の運行乗車から終了までを映していた。

車庫に帰着した運転手に初出勤の感想のインタビューをし、運転手は

『終日緊張していました。これで私もバス運転手として社会的貢献が出来る』と

語っているのだ。

 

ふむ。

社会とつながって嬉しい気持ちは、わかる。

しかし「社会貢献」という言葉に、わたしは違和感を持つ。

『社会的貢献が出来る』という大袈裟な思いに、驚きを隠せない。

 

そもそも運転手であろうと新聞記者であろうと、教師であろうと

一人前の成人として職を得て糊口をしのぐことは、当たり前のことだ。

己が生きてゆくための必須ではないのか。

 

その行為を「他者の為にしている」と、どうして結びつけるのだろう。

『社会的貢献』と考える根拠は、一体どこから生じるのだろうか?

 

前述したように、ボランティアは大いに結構である。

人助けも大賛成だ。

斜めにモノをみるひねくれ者のせいか、わたしは

「褒められたり、他者から賞賛されること」に価値を持ち過ぎているように感じるのだ。

『いい子になれ』『他者のためになれ』など、小学生時代からのメドキの教育に

関連しているのではないかと思える。

 

 社会貢献・・・・

桜のはなびらのスタンプではないのだ。