モーパッサンの「女の一生」

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を、読んだのは高校1年ぐらいの夏休みだったか。

決して早くはない時期の出会いだったが正直、あまりよく理解できなかったし

おもしろくなかった。

おまけに読書感想文がくっついてイヤイヤながら完読したのを覚えている。

 

以来、この本に関しては読み返すことなく今日まで

来たが、それでも映画やテレビなどで数々放映されたので

ストーリーは、いやでも覚えている。

 

最近、昔の文学作品の映画化されたものを観たくて

ビデオ屋さんに通いだした。

夏目漱石森鴎外やそして、宮尾冨美子の作品を探しているが

悉く置いておりませんと言われ、がっかりしている。

若者に特化したビデオ作品に力を入れているのか

アニメや戦闘シーンの多い映画が主のように感じる。

 「エリザベス」「エリザベス一世」などと一緒に借りたのが

ご存じモーパッサン原作の「女の一生」だ。

 

岩下志摩がずいぶん若いころの、時代設定は昭和21年から40年後半

までの役を演じている。

 

何不自由なく育てられた無垢な女性が結婚に夢を抱き

初めて知りあった縁戚の婿を取るのだが、この婿が性格も品性も良くない。

あろうことか姉妹同様に育った女中を孕ませたり、同僚の奥さんと

深い仲になり、あげくその夫に射殺される。

 

目に入れても痛くないほど可愛い一人息子は放蕩三昧で

いつまでたっても自立できず、母親を悩ます。

やがて援助してくれた父母も他界し、息子の凋落で

経済的にも破綻し泣き暮らす。

そんなときに力になってくれたのは、女中であり、女中に産ませた子であった。

彼らはかつての恩に報いているわけだ。

 

財産を失い、さんざん息子に翻弄される自分の運命を

悲観する、主人公(信子)に生き方を変えなければ

しあわせにはなれないと諭す、女中の言葉が的を射て重い。

 

人生は「あざなえる縄の如く」・・・

老いてようやく足元の小さなしあわせに気がつく。

人生、悪いことばかりもない代わり、良いことばかりでも

ないことを教えてくれる。

現代にも通ずる生き方の処方箋のようだ。

 

若いころの田村高広などが出ていて見ごたえ満点。

谷崎潤一郎の「細雪」のようにゆったり画面が流れているのが心地よい。

古い文学作品をもっと観たいなぁと思う。