K子の場合



K子の婚活①


わたしのまわりには、わけアリの女性が多い。
一生懸命に生きているのだけど、空回りをしている。
そんな生き心地の悪さを抱えているひとりに、K子がいる。


華奢なスタイルと人並み以上の容貌を持ち、
またインテリジェンスを感じさせる女性でもある。


そんな彼女が夫との別居に踏み切ったのは、5年ほど前だ。
見合い結婚した夫は、別に浮気をするでもなくまじめに
働き、会社からまっすぐ帰る、収入にも不足はない。


傍からみれば、夫に何の不満もないように見える。
彼女が家を出たとき、彼女の両親や知人は
そのことに理解を示さず「わがまま」と決め付けている。


別居に至るまでの課程をわたしは彼女から聞いてきた。
なるほど、夫婦のことって他からは窺い知れないことがたくさんある。
それを単に妻のわがまま・・と取るのか、意見の分かれるところだ。


彼女の中での一番の憂いは「夫のロボット化」にある。
理系卒の夫は、ほとんど子どもや妻に関心を示さず、
仕事から帰ると、そそくさと食事をすませ
ひとり自室で自分の世界にこもる。


部屋には膨大なビデオの数々と最新のオーディオが備えられ
ひとり悦に入るのだそうである。
他と交わることもなく、家族であっても会話を避ける。
夫はロボットのよう・・・
ずっとK子がいい続けてきた言葉だ。


結婚するときは若いし、予想もしないことである。
何のための夫婦であり、家族なのだろうかと空白な気持ちを
抑えることができない。


このような父親に反発し、息子も娘も高校を出ると一人暮らしを始めた。
ぽつんと残された妻のK子は会話のないロボット夫との
関係をなんとか修復させようと、試みる。
離婚や別居は避けたいという気持ちもまだあった。
しかし何をしても取り付くシマがない。
出て行った子どもたちは、父親との離婚を進める有様だ。


家族の団欒を経験せず、愛情不足に育った?彼の
生育歴のせいもあるのか、いっこうに改善しない。
そのことの重要性にも気づこうとしない夫に、
自分の精神が壊れそうになり、更年期の症状と
相まってからだにも変化が現れた。


気力がなくなり、吐き気や頭痛と言った症状とともに
誰とも会いたくなくなるなど軽いうつ状態になった。
カウンセリングを受ける一方で、この状態から抜けるのは、
夫と顔を合わさないことが一番の良策と思え、家を出たのだ。


人間パンのみでは生きていけない。
しかしパンを得ることも必要。
彼女は家を出る55歳まで一度も働いた経験がない。


それでも離婚の気持ちが強い。
別居してから再三、別れたい意思を伝えるが応じない。
会社の昇進に響くのか。
それでも多少男気のある夫は生活費を毎月欠かさず振り込んでくれる。


そんな彼女が密かに婚活を始めた。

この婚活の話しを披瀝してみたい。
彼女には了承済みである。

以下明日に続く・・・