これほど感情移入したドラマも珍しい。
この半年、目が離せなかったNHKの朝ドラ「カーネーション」が終わった。
一つひとつの場面に熱い情が散りばめられ、幾度となくティッシュを要した。
しかし心の中はほかほかと温かく、重厚な書物に出会い
読み終えたあとのような満足感がある。
心底おもしろかった、そしてドラマを通じて
「生きることの哀切」を学んだ気がする。
あれほど生き生きと自分の人生を生き切ったひとも
また珍しいのではなかろうか。
コシノヒロコ、コシノミチコなど有名デザイナー3姉妹が、
母の背から学び取った大きさを思うとき
彼女たちならずとも、たくさんのひとが生きる知恵や勇気を
もらったのではないだろうか。
「岸和田のゴッドマザー」に乾杯!である。
主人公の90余年の人生をあまつことなく表現したドラマは
生前の希望であったようだがそれが叶い
あの世とやらで、さぞ喜んでいることだろう。
彼女の人生に盛大な拍手を送りたい。
年齢に捉われずに「いま」を愉しみ活きる美学。
生涯を仕事人として生きて、さらっと世を去る。
あのような大往生といえる終焉ができたらと、小さなわたしも願う。
コシノアヤコは、逝去して5年が過ぎているらしい。
逝ったひとは、あのように身近なところで
モノこそ言えないけれどじっと家族を見守っているのだろうかと
いまさらながら自分の身に置き換えてみると
なんとなくわかるような気もする。
途中、主役交替で彼女のイメージを維持できるのかと
心配したけれど杞憂に終わった。
見事に夏木マリは、コシノアヤコの晩年をも演じきっている。
久しぶりに心に残るドラマを見た。
出演者にもお疲れさま、と労をねぎらいたい気持ちである。
ひとつ朝の楽しみが減って残念、涙ともしばらく無縁である。
万博公園のサンシュユ