ありがとう

奈良の「橿原神宮駅」に、定刻に着くとシニア・ナビの
まこさんと与作さんが懐かしげに迎えてくれる。
月に数回、おしゃべりも愉しむスカイプ仲間でもある。



明日香へ、この季節に訪れるのは初めてだ。
まこさんのブログでお馴染みの、石舞台や甘樫の丘などは
菜の花や桜のコントラストが見事な春先や、彼岸花と黄金色の
稲田があまりに有名な初秋のハイキングコースとしても名高い。


梅雨明けの苔むしたこの時期の、空気のなんとおいしいこと!
駅に降り立つと一度に万葉の香りを肌に受ける感がある。
この地の住人であるまこさんの案内で
知られざる明日香を満喫できる!
ワクワク感でいっぱいだ。


彼女の運転する車のなかでは久しぶりの再会と
おしゃべりとで、ゆっくり明日香の村を愛でる暇がないぐらいだ。
どこを走っても古式豊かな建物と緑の青さが目に沁みる。


まこさんがブログで紹介している「万葉会館」や散歩の途中で
立ち寄るお饅頭やさんも、写真より趣がある。
石舞台などのハイキングコースも走ってくれる。


町中が保護地域に指定されているせいか、建造物との調和が見事だ。
いぶし銀の瓦屋根がまぶしく連なり
どこまでも続く緑と古風な街並み。
まったく、おしゃべりと景色の堪能で忙しい。



昼食は、まこさんお薦めの、懐石どころだ。何やら難しい名前のお店である。おしゃれで典雅な処で、ゆったりと料理をいただく。もと吉兆のコックさんだったというオーナーの素朴な人柄が感じられる料理の数々が運ばれてくる。




食は器でいただく」と言われるけれど、そのこだわりもしっかり感じた。


日本の伝統的な和食の素晴らしさは目でも味わえる。
こちらも例外ではない。
例によって、おしゃべりと食事で忙しく写真を取る暇がない。
ランチでありながら、最高の贅を味わった。


「食事は何をいただくか」ということも要素のひとつだが
「誰と食べるか」も、大事なことのように思える。
食べることは粘膜に通ずるということで、ある種のエロティシズムがある。
気の置けない友との語らいは、料理とともに心を満たしてくれる。



食事を終えると、まこさんの運転で「大化の改新発祥の地・淡山神社」へと向かう。
移りゆく山の重なりや緑を愛でながらの車での移動は
電車とバスを乗り継いでしか訪れたことのないわたしには羨しく思える。



淡山神社」についての詳細は省くが、10年ほど前の紅葉の時期に訪れて以来である。少しも変わっていない!人が少ないのも気に行った。ゾロゾロゾロ観光地の鈴なりの人出は、最近しんどさを感じる。湿った苔の匂いをたっぷり吸いこむとマイナスイオンの清々しさが、五臓六腑に沁み渡る。


















淡山神社」を堪能したあとは、甘いお菓子とお茶でくつろぐ。
まこさんが散歩の途中で訪れるという自慢の店だけあり
情緒的で静かな佇まいが素敵だ。


こちらでもたっぷりで濃厚な?おしゃべりに余念がない。
本音で話ができるのが何よりいい。
姉妹のような(?)わたしたちに与作さんは
親戚のお兄さんのような温かい目を注いでくれる。
3人は誠に絶妙な間柄なのである。


現在のシニア・ナビが不満だなどと言っても
こうして、かけがえのない友を得たことに全員、感謝である。


乙姫さまのような典雅な時はあっという間に過ぎ帰路につく時間が迫ってきた。
駅までの道中、まこさんの家の前を通るらしい。
厚かましくも寄せていただいた。


想像していた通り旧家であることが、ひと目でわかる。
う〜む、200坪はあるだろうかと、
与作さんとわたしは、ゲスの勘ぐりで値踏みをする。
ひと部屋もありそうな玄関のタタキを上がると田の字のような広い部屋が続いている。
日本古来の家屋であるが、この地域はみな似たような建て方をするらしい。




玄関に飾られた「型絵染」を拝見。
当り前だけれど、写真より実物がはるかにいい。


あわただしく、まこさんちを後にして二人に別れを告げた。
充実して心豊かに感じられる一日だった。
ありがとう、まこさん、与作さん。