映画「最強のふたり」

久々のヒット作と思えるほどの感動である。
いやぁ、おもしろい!
泣けた・・・。
バロック音楽が随所に流れ、気持ちが高揚してくる。
もう一度、劇場で観たいと思うほどである。


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2011年、フランス映画。
監 督: エリック・トレダノ, オリヴィエ・ナカシュ -
出演者: クロチルド・モレ, オドレイ・フルーロ,
    フランソワ・クリュゼ, アンヌ・ル・ニ, オマール・シー -


原題は、Intouchables"(アントゥシャブルズ)。
仏語ではインドの最下層カースト(触れてはならない階級)の
意味もあるらしい。


白人と黒人、最貧困と大富豪。
このどちらも出あうことのない世界に住むふたりが出会い、人生が大きく変わる。
実話である。


大富豪フィリップはパラグライダーの事故がもとで首から下が動かない。
身震いするほどの笑顔の素敵なカッコいい紳士である。
引きこもりをしていた彼は厭世的で介護人は1カ月と持たない。
その介護人面接で、ひょんなことからスラム街に住む
刑務所あがりのドリスが採用される。


ドリスは複雑な家庭環境のなかで教育も受けず育ち
その日暮らしの生活をしていて
失業手当をもらうために面接の列に加わっていた。


宮殿のような屋敷にバスつきの立派な部屋をあてがわれ
執事、コック、メイドとともに使用人になるが
観ているだけでため息が出るほど豪華!である。


この映画で強調されるのにスキンシップがある。
車椅子の乗り降りを初めとして,多くの場面でドリスは
フィリップを抱きかかえている。
この黒人の大男が小さな初老の白人障害者を抱きかかえる図は
象徴的でもあるという。
触れ合うごとにフィリップは介護人ドリスの世界に入っていき、惹かれる。


室内音楽でクラシックのヴィ・バルディを聴くフィリップに対して
ドリスは「アース・ウィンド・アンド・ファイア」のセッテンバーを
リクエストする。


なんというエキサイトな曲!!
鳥肌ものである。
そして官能的なダンスを踊るドリス。
つんとすました秘書や楽団も、ドリスの踊る姿に呼応し
いつのまにかダンスや音楽を愉しんでいる。


無学でスラム出身のドリスをよく思わない身内が
フィリップに注進するが彼はドリスを信じる。


そんななか、異母兄弟の弟がドリスの元へ屋敷を訪ねて来たことから
「躾・教育」の必要を感じた雇い人のフィリップは
ドリスをスラムの郊外へと返す。
本心は帰って欲しくないのに。


新しい介護人が来てもフィリップは心を開かず体も触れさせない。
髭も伸び放題の生きる気力を失ったフィリップを見かねて
秘書がドリスを呼び戻す。


久しぶりに会うフィリップに
「なんだそのヒゲは?ヴィクトール・ユゴーじゃないか!」と言う。 
いつの間にか、郊外ブラックと言われるドリスの口から
「ヴィクトール・ユゴー」なる言葉がついて出るようになったのだ。


ドリスはこのフィリップとの触れ合いで
知らず知らずに「教養」がついたようである。


日本には貧富の差が諸外国に比べて少ない。
大富豪も少ない代わりに極貧の異人種も多くはない。
それでも大金持ちが、経験も資格もない介護人を雇うようなことは
あり得ない。


階層、階級を超えての出会いが人間を大きく進化させる。
まさしく「最強のふたり」である。

「アース・ウィンド・アンド・ファイア」のセッテンバーを
ユーチューブで聴いてみた♪ すばらしい。
まだの方は必見の映画です、どうぞ。