「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉」
と、歌われた葛の葉伝説のある信太の森神社に参詣してきた。
かの有名な陰陽師・阿倍清明の生誕の地でもある。
由緒書きには・・・
『昔、摂津(大阪)に住む阿倍保名(あべのやすな)が信太大明神に参詣し池のほとりで沐浴しているところへ狩人に追われ傷ついた白狐が逃げてきたのをかくまって逃がしてやったところ、保名は追ってきた狩人たちに責められて深い傷を負ってしまいました。その保名のところへ葛の葉と名乗る若い女がたずね介抱をし、やがて二人は夫婦となりひとりの童子が生まれました。六年経ったある秋の日に葛の葉は庭の美しい菊に心をうばわれ、うっかり狐の本性を童子に見られてしまいます。もはやこれまでと葛の葉は前出の一首を障子に残して信太の森へ帰っていってしまいました』
(和泉市信太の森ふるさと館のパンフより)
門前には神社の狛犬に変わって一対のきつねが控えている。
もう片方の写真が、どうしても出て来ない・・・
このお狐さんはお寺の仁王さんと同じように阿吽(あうん)の
二体をはっきりと見て取ることが出来る、という。
「阿」は息をふっと吐いた瞬間、「吽」は息を吸い込んだ瞬間の
姿を表していると言われているようだが、初めて知った。
二体のきつねはそれぞれ口に何かくわえており
右側の「阿」像は玉を、左側の「吽」像は巻物を口にくわえている。
御神樹になっている二千年を超える大楠
幹のまわりは11m、高さは21mあり、
根元より二つに別れているので夫婦楠とも呼ばれている。
いい枝ぶりが四方に繁茂しているので千枝(智恵)の
楠とも言い伝えられているそうだ。
平安の和泉式部は
「秋風のすこし吹くとも葛の葉のうらみがほにはみえじととぞおもふ」。
と、詠んでいる。
葛の葉稲荷の境内には葛の葉姫に化けた白狐が
自らの姿を写して見たと伝えられる「姿見の井戸」がある。
葛の葉が無事にこの森に帰り着いたことから、
近頃では「無事帰る」というので交通安全祈願に
この神社を訪れる人も少なくないのだそうだ。
その地にまつわる伝説は、おもしろい。