家庭があって、家族がない

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女子高生が同級生に猟奇的な殺され方をして、衝撃が走った。

メディアも推論し、加害者の心理に迫るなどしているが

人間ひとりの心の中は、容易に推し図れるものではないだろう。

 

被害者の両親は「宝物」だった子どもの突然の悲報に接し

言葉もなく、悲しみにくれている。

そして手記のなかで絶対許すことができないと心中を、明かす。

 

加害者の父親も弁護士を通じ謝罪文を発表した。

相手の尊い人生を、我が子が奪ったことに対し、お詫びのしようもない。

決して許されることではない、と言及しながら

父親自身が、今年の3月、娘から金属バットで殴られ重傷を負い

精神科医を受診させたが、医師からは命の危険があるからと、別居を進められた。

複数の医療機関の助言に従い最大限のことをしてきたが

力が及ばず、残念でならないと結んでいる。

 

当事者がともに女子高生で親しい間柄、そして成績優秀だという。

「だれでも良かった・・・」

特別な怨恨も被害者には抱いていないことも報じられている。

いったいなぜ?

何があったの?と驚愕し、加害女子高生の成育歴や、

家庭環境をこぞって、憶測する。

 

被害者の親の悲しみは、もちろんだが、加害者の親の苦しみも想像できる。

加害者の親は結果として、ひとりの人間の命をあやめた子の

親であるから、社会的責任も重く受け止め

何より、親としての自責の念が強いだろうことは、わかる。

 

最近は似たような凄惨を極める事件が後を絶たない。

多くの親たちも内心では戦々恐々の思いで、いるのではないだろうか。

 

それだけ社会が膿み、人の心が荒廃し、劣化していることの証とも言える。

このような戦慄走る大事件は、決していまや他人事ではなく

社会全体で受け止める時期に来ているのでは、とも思う。

 

しかし・・・

加害者の親は、精神科医の助言に従い、子どもをマンションにひとり住まい

させた、と言うけれど、親が子を見放したことに変わりはない。

子どもはどんな思いで、親と離れて暮らすことに同意したのだろう。

親に捨てられたと感じないだろうか。

 

子どもは、等しくまっ白な状態で生まれる。

どんな色に染まるのかは、個々人の努力や遺伝子の影響にも寄るが

家庭環境にも大きな因がある。

 

学校から帰って一人でご飯を食べる、

誰が作るの?

食事は胃袋を満たすだけではない。

ささやかな団欒のなかで、あるいは兄妹たちとのケンカのなかで

人は人としてのありかたを身につけ、育っていく。

小さな社会の入り口だ。

話し相手のいない一人暮らしのなかで、気持ちが鬱積して

追い詰められたことも、想像に難くない。

 

親の、熟慮の末の決断だとしても、あまりに短絡的で

稚拙さを感じるのはわたしだけか。

 

両親ともに高学歴、人も羨むような経歴だが、肝心のわが子を心の闇から

救いだせなかった加害者の親の苦悩。

そして被害者家族の終わりのない、悲しみ、苦しみを思う。

 

理不尽にあの世に旅立った女子高生、ご親族に

衷心からお悔やみ申し上げます。