3日ほど前に訪れたばかりなのにまた、奈良を訪れた。
あるサークルの初めてのオフ会である。
上村松園は大好きなのに、こんなに近くに松園ゆかりの
美術館があるとは知らなかった。
人との出会いで新たな情報や現地を訪れることはありがたい。
松伯美術館は、近鉄奈良線学園前にあり、閑静な住宅街から
そう離れていないところに位置している。
上村松篁・淳之両画伯からの作品の寄贈と
近畿日本鉄道株式会社からの基金出捐により1994年3月に開館。
当美術館では、上村松園・松篁・淳之三代にわたる作品の下絵も含め、
展示している。
今回は収蔵作品展「雨の調べ 風の韻(ひびき)」
~日本の余情を楽しむ~
と,銘打った展覧会である。
上村松園「鼓の音」松伯美術館蔵
上村松篁 「青柿」 松伯美術館蔵
上村淳之「晴れ間」松伯美術館蔵
落ち着いたたたずまいの美術館は、人もそう多くはなく
じっくりと見ることができた。
特に心を揺さぶられたのは上村松園の数枚の下絵である。
畳1畳分ぐらいはある大きさの紙に小さな筆を使って
緻密にデッサンしている。
彩色する前の下絵は、ところどころ新たな紙が張り付けられ
修正のあとが伺える。
松園の人柄を彷彿とさせる、美人画の品のあること。
目の肥えた松園がモデルに着せる着物や帯も豪華で
凛とした表情の女性をより気高く表現している。
下絵にあった『虹を見る』
下絵にあった『時雨』
傘の柄などすっきりした線は差しを使っていたようである。
赤ん坊の横顔も丸い鼻と膨らんだほっぺや、丸く
ぷっくりした手の指や、ふっくらした足をさも
いとおしげに丁寧に描いている。
当たり前だけれど、しっかり下絵を描いていることに
鳥肌が立つ思いだった。
これまで京都美術館などで上村松園展などをみて
その豪華さやほのぼのとした気品ある色気に
圧倒されたけれど下絵でこのように興奮したのは初めてだ。
「本展では、松園、松篁、淳之の作品に描かれた雨や風の表現に焦点を当て、
そこに宿る豊かな情趣をご覧頂きます。
雨上がりの虹を眺める微笑ましい親子や風にあおられた裾を
気にする女性のいじらしさ。
雨に濡れた苔の美しさや風に乗って空高く舞う鳥たちの営みなど、
画家たちが捉えた細やかな風情が皆様を深奥の世界へといざないます。」
ということで子息の松篁、孫の淳之の下絵もたっぷり観ることができた。
来月松園の特別展があり、ぜひ観たいと思っている。
美術館の敷地のなかに、風情のあるお茶処もある。
涼風が吹き抜け心地よい。
昼食を終えたばかりだったからこちらでは庭園を観るだけにした。
小高い丘を登ると竹林が眼前に広がる。
秋篠寺は次回紹介しよう・・・