ある晴れた日に・・・


ゴールデンウィークも終わり、また静かな日常が戻ってきた。
隠居人のような生活者のわたしも、それなりにやることはあり
なるべく自分に負荷をかけないよう、以前のバタバタ生活にならないよう
選びながら毎日を送っている。



退職して、1年が経つ。
なんと早いものかと思う。
飽きもせず本ばかり読みあさっていたこの1年とはおさらばし
新たな日々が繰り返されている。
自分の中での目標が少しずつではあるが
進捗していることによろこびを感じる。


連休の合間に新緑をいっぱい吸ってきた。
ふだん運動不足を自認しているわたしには
難行苦行といえる散策であり山歩きだった。


大阪から葛城山のふもとまで、電車とバスを使い
約1時間半ほどの距離にある大和葛城山に行ってきた。
ふもとから山頂までを徒歩にすることにし
帰りはロープウェイに乗ることに決めた。



大和葛城山は(通常葛城山と呼ばれており近辺には和泉葛城山もある)
奈良県御所(ゴセ)市と大阪府千早赤坂村の境にある標高969米の山で、
近くに金剛山(標高1125米)などがある”金剛生駒紀泉国定公園”である。



山頂からは、大和、摂津、河内、泉州をのぞみ、大峰山・大台山、
大阪の先にある淡路島や六甲山系も見える。



奈良盆地は、弥生時代から独自の文化を形成し、三輪三山を中心とした
統一勢力(春日、物部(もののべ)、倭、三輪氏など)が
三輪王朝を築いた東麓に対し葛城山(現在の金剛葛城連山)を
中心とした勢力(葛城、平群(へぐり)、巨勢(こせ)、蘇我氏など)は
葛城王朝を形成したともいわれる。



この東西歴代諸族の中で、最大の勢力を誇ったのがこの地区に
本拠を構えた葛城氏といわれている。




山頂までの標高差は約500m(ちなみに富士山の標高差は約1440m)
ロープウエイに平行して登る道は、45度を超える厳しい道のりである。
時には梯子を上るような道すらあった。


この急な坂道を汗だくになりながら、息も切れ切れに登る。
このしんどいこと!
何ゆえにこんな苦行をするのか、
行きもロープウエイにしたら良かった・・・
などと思いながら、やっとの思いで一歩、一歩足を進める。


まったく日ごろ足腰を鍛えていないことを悔いる。
まわりの新緑や鳥のさえずりに耳を傾ける余裕もない。
それでも3,4歳ごろの幼児を連れた家族連れや
中高年者のカップルなどと行き交い
あいさつを交わしたりしているうちに、だんだん元気が出てきた。
めげてなるものか・・・・。


それでもとても一気に山頂までは行けない。
何度も休みながら途中、昼食を摂ることにした。
緑風をうけ、ヒノキの森でおにぎりをほおばる。
持ってきた八朔をむき、おやつのナッツを食べ、紅茶でのどを潤す。
ああ〜やっと生き返った気分・・・


ウグイスやヒバリの鳴声が心地よく響く。
ゆばのみつばツツジや、薄紫のカタクリの花などに目を細める。



山頂まで2時間半ほどを要し
帰りはロープウェイで、登ってきた道を見下ろす。
なんと気分のいいこと!
あっという間にふもとに着いた。


しかしあの険しい坂道は、何度思い浮かべてもしんどい。





この山は万葉集にも次のように詠われている。



葛城の 高間の草野 早知りて
かづらきの たかまのかやの はやしりて


標指さましを 今ぞ悔しき
しめささましを いまぞくやしき


作者未詳
巻7 1337