あっぱれ!80歳

知人女性ふたりと、わが家でお茶を飲んでいると、モジモジと
言いにくそうに「お願いがあるのだけど・・・」と、一人が切り出した。
「パソコンを教えてくれない?」
とつぜんで驚いた。
彼女は確か80歳を越しているはず・・・


高齢の彼女とは、わたしの姑が健在なころからの知り合いであり
わたしの新婚のころをよく知っている。
若くして結婚し義父母と同居していたわたしは、
ごたぶんに漏れず嫁姑の確執があり年長の彼女に
愚痴などを聞いてもらい、母か姉のように慕っていた。


亡き夫の闘病もずっと見守ってくれるなど、
わたしの人生を多少なりとも知っている人である。
「よく乗り越えたわねぇ」
会うたびごとに、感慨深げにねぎらってくれる。


その彼女の夫は、脳梗塞で倒れて10年以上になる。
半身麻痺と言語障害が残り、自宅でずっと面倒を見てきた。
自身も精神的、肉体的疲労が限度に達していたころ
ようやく自宅近くの施設の入居が決まり、介護の荷が少し軽くなった。
それと時期を同じくして、腰痛狭窄を患い、手術、入院を余儀なくされた
経緯がある。


そのベッドのなかで思ったのだそうだ。
「自分の人生もいつどうなるか、わからない」
「ならば、しっかり今やりたいことをやっておこう!」と。


70代後半まで介護の傍ら、社交ダンスを愉しみ、俳画にいそしんでいた。
それらを全部辞めてしまって寂しい思いをしているころ
息子さんからノートパソコンを贈られた。


退院してから市の講習に通うなどしたけれど、家に帰ると忘れてしまい
印刷すらおぼつかない。
息子や孫に聞いてもさっぱり、埒があかない。


何とかパソコンをモノにして文章のひとつぐらい残したい、
インターネットやメールもしたい!と意欲満々である。


幾つになっても学ぶこころを持っている、
この心意気に感動し、わたしは、ふたつ返事で了承した。


もう一方の女性は60代の前半であり
パソコン教室で「ワード」は習得したが
今度は「エクセル」に挑戦したいという。


ひょんなことから、彼女たちの学ぶ気持ちを応援することになり
忙しいけれど、うれしく思っているわたしである。