山萌る

新緑を、じっくり愛でてきた。
まさに山が萌える・・・という感じである。
若草色から、黄緑、浅葱色、オレンジ、淡いピンク、山藤の紫、
竹林の濃い緑、薄く靄のかかったグレーなどなど・・・。


ひとつの山を愛でるにも何とたくさんの色があるのかと感嘆し
一服の絵画を観ているような満足感がある。
自然が織り成す色彩の饗宴に、ただただ感服するのみである。


秋の錦秋が油彩なら初夏のそれは淡彩の、と形容したい蒼さを
飽きずに、車窓からどこまでも続く樹海を眺めた。
木々のなかに分け入り、新鮮な山の空気を胸いっぱいに
吸い込みたい気分である。


息子夫婦と岡山まで墓参してきた。
ゴールデンウィークの高速道ラッシュと重ならないことを
祈りながら、早朝の出発である。
朝6時過ぎに彼らが迎えに来てくれ、意に反して道路は空いており
すいすいと一挙に休息もとらず、目的地に2時間で着いた。
そして帰りも事故車の渋滞に一度あっただけで
覚悟していたそれに遭わず、無事早めに帰宅できた。


昨夜は「こどもの日」の祝いをするためわが家にチビたちを
招き、一緒に晩ごはんを食べた。
ハマチやマグロの握り寿司が好きだという潤平やかえでのために
たくさん注文した。
(わが家で作らなかったのである。)


早々に潤平たちを帰すと翌朝の準備にかかる。
といってもいつもの簡単弁当だけである。
朝、おにぎりを作る時間がないかも知れないと、夜のうちに握っておいた。
かろうじて「鶏のから揚げ」やサラダや卵焼きのおかずができた。


息子たちは車に乗り込むや、さっそくおにぎりをほおばり始めた。
作りたてではないが市販のそれより、ずっとおいしいはず?である。
梅干や昆布を適度にはさみ、自家製のフキのふりかけをまぶし、海苔で巻く。
熱いお茶で流し込みながら二人は、あっさりとすべて平らげた。
見事な食べっぷりである。


ふだん一緒に行動することがない分、こうして「墓参」を理由に
ドライブできることは嬉しい。


本当はどこぞの温泉旅行に、この初老の母親を誘って欲しいところだが
新婚の彼らにくっついていく野暮さは、まだ持ち合わせていない。


娘たち家族とのそれも楽しいが、息子夫婦には「気楽さ」がある。
チビたちに目が離せないこともあり、ばぁばは、子守に忙しい由もある。
けれど一番の理由は、やはり同じ苗字を持つ一体感か。
娘はヨメにやった子、こちらは嫁にもらったほうである。
ムコ殿には、多少の気兼ねもするが、息子なら堂々と威張っておれる。


わたしも歳を経たせいか、何が起きるかわからない!という危機意識を
常に持つようになっている。
道中、事故にでも遭ったりすると想像するだけで恐ろしい。
そして婿殿の家族に申し訳ない思いが一番に立つ。
そういう意味においても息子たちとは、何となくの気楽さがあるのだろう。


今日は、たっぷり新緑を目に焼きつかせた。
山が萌えていた。



わが家に咲いた花、ああ〜名前を思い出せない。