あなたへのメッセージ

紀子さま(仮名)
メールをありがとうございます。
深夜の介護の合間に書かれたのですね。


紀子さまのメールを何度も読み返しました。
悲痛な叫びが聞こえてくるようで
切ない気持になるのを抑えることができません。
手を差し伸べたくとも、お役に立てない自分を
もどかしく感じています。


老境に入り、これからご夫婦お二人で旅行など
楽しもうと思っていた矢先のご主人さまの事故・・・
脊髄損傷を負われて、ひとりで介護の日々を
送っていらっしゃるとのこと・・・
なんということでしょう、胸が痛みます。


人間生きていると予期しないことに遭遇します。
しかし、あまりにも残酷な出来事ですね。
受け入れがたいですね。
紀子さまご夫婦の無念なお気持ち、お察しいたします。


ご子息は立派に成人され、海外等へ赴任されているとのこと。
肝心のときに傍にいてくれないのも心細いですね。
でもきちんと自立した生活をされているのが、親の心の拠り所でもあり
安心できることでもあります。
いずれ、ご主人のお世話にも一緒に向き合ってくれるときが来るでしょう。


ご親戚や、介護保険などに頼りながらお暮らしとのこと。
それでもどうか、すべてをひとりで抱え込まないでください。
社会資源は、できるだけ活用できたらいいですね。
そのためには、周りの支援者に色々訊き、甘えましょう。


悲嘆にくれて気持が萎えたり、落ち込んだりするのも当然です。
他と比べて自分をみじめに感じたりする・・・
そして一番辛いのは、介護者に(ご主人さま)当たってしまい
そしてご自分を責めてしまう、ということですね。


介護の本当の苦しみは、肉体的・精神的疲労や、経済的なこと以上に
表に出ない「自分の心の葛藤」にあるような気がします。
わたしも似たような思いや経験をしていますから、わかります。
そのことによる悔いもあります。


人間ですから、いつも聖人君子のように優しく振舞えません。
時々、思いもよらない冷たい自分を露呈するときもあります。
ましてや、孤軍奮闘の日であれば、気持の持って行き場がなく
追い込んでいく自分があるでしょう。


そんなときは、ほんの数時間でもいいです。
愉しいことを考えたり、実行できる時間を持たれてはどうでしょう。
1行でも2行でも、ご自身の思いを綴ってみる・・・
好きな音楽を聴く・・・
親しい友人との語らいを持つ・・・
ずいぶんと気分転換が図れます。


気分が変わると執着心が薄れて気持が楽になり
また新たな意欲が生まれてきます。
ないものねだりのような感覚より、あることへの感謝の念も生まれます。
うまく自分自身をコントロールできるようになると
やさしい気持ちでご主人様に向き合えます。


どうか、ご自分を追い込まないでください。
責めないでくださいね。
泣いたり笑ったりしながら現実を受け入れましょう。


紀子さま、どうぞ悔いのない「今」をお過ごしください。
ご主人様に向き合いながらご自分をも大切に・・・
ご自身の体もおいといくださいね。
時節柄、ご自愛くださいませ。